【第17回】 アンテナを張れ

高齢者になってくると、それまでの自分の場や領分にしがみつき、新しい領分を開拓しなくなることが多い。新しい情報や知恵、知識、アイディア、ヒントを採り入れなくなり、自分の安住の場にとどまろうとする傾向がある。合気道の稽古にしても、自分のやり方が最高であると信じて、そのやり方に固守し、また他人にもそれを強要しがちな様子が見える。

われわれの周りには、情報、知恵、知識、アイディア、ヒント等が無尽蔵に飛び交っているのである。必要に応じて人はそれを目で捉えたり、耳で捉えたり、感で捉える。何かを真剣に求めて、アンテナを張っているとそれを捉えやすい。

合気道を修練しているといろいろな問題にぶつかる。その解決法を考えて、何かないかとアンテナを張っていると、不思議とそれに関係する記事が新聞や雑誌に載っていたり、テレビの番組に出たり、電車の吊り広告に載っていたりするし、歩いている時にこうではないのだろうかというヒントやアイディアがふっと出たりするものだ。自分の頭の中にあったものが出てきたわけでもないし、自分の思考の延長線で出てきたものでもなく、偶然目にしたり、突然どこかからやってきたとしか考えられない。

情報、知恵、知識、アイディア、ヒントは飛び交っている。そのことを、まず信じることである。また、場がかわると異質のものが飛び交うようである。そうだとすると、いつも同じ場にいないで、できるだけ違う場にいけば、より多くのものが得られるだろうし、予想もしていなかったものを得ることもできるかも知れない。合気道で壁にぶつかっている時なども、その問題解決のためのアンテナを張りながら、他の武道の演武会を見たり、お能や歌舞伎を見に行ったり、美術展に行ったり、山歩きをしたり、散歩をしたり、また、喫茶店でぼうっとしたりしていると、そのソリューションがアンテナにひっかかってくるものだ。

まず自分の目標や問題意識を持つことが大事だが、その解決のための情報が飛び交っていることを信じ、いろいろな場に入ってみて、アンテナで自分なりの情報、知恵、知識、アイディア、ヒントを捉えてみてはどうだろう。