【第166回】 螺旋で上昇

人は一日24時間を一年間に365日、寝て起きてを繰り返し、80年ほど生きていく。合気道も数少ない基本技を繰り返し繰り返し稽古し続けていく。

同じことを繰り返し繰り返しやるわけで、円をぐるぐる回っているとも言えるだろう。円を回って同じことをしているのに、何故飽きないのか、何故同じことを繰り返すことができるのか。そこには、繰り返す意味があるはずである。

合気道の動きは、螺旋の動きになるという。螺旋とは、3次元曲線で回転しながら回転面に垂直の方向へ上昇する曲線である。螺旋の例としては、DNA、ねじ山、朝顔のつるなどがある。螺旋は運動性や生命力を感じさせるし、合気道で技を掛ける場合、直線よりも、ただの円よりも、大きなエネルギーが出る。

ただの円は、螺旋の3次元とは違い、一巡しても元の処に戻る2次元曲線で、螺旋よりも運動性、生命力、エネルギーが少なく感じられる。螺旋は基本的には繰り返しの構造になっているが、一巡しても同じ位置には来ない。基の位置から上昇した位置に来るのである。

ここに同じことを繰り返す意味があるはずである。同じことを繰り返すが、螺旋で少しづつ上昇するのである。

この螺旋での上昇は、合気道だけでなく、誰でもどこでもなされることであるから、宇宙の運行に則ったものであり、宇宙の法則であるはずである。同じ生活したり稽古するのでも、繰り返し同じことをやるのでは、螺旋にはならず、ただの円や平面的な渦捲きにとどまる。それでは上昇はないから、宇宙の意思に反することになる。また、やっていることに満足できないし、生きる意味や稽古の意味を感じられず、自分に失望することになるのではないだろうか。

やるべきことや基本を繰り返しながら、それが宇宙生成化育に則った螺旋として上昇していることを信じ、残りの人生を生き、稽古を続けて行きたいものである。