【第163回】 マグネット効果

最近、マグネット効果という言葉をよく聞く。ホームページなどでその意味を調べてみると、主に次のような意味があるようである。先ずは「主力商品や店舗による集客増加効果である。例えば、集客力のある大型のショップがショッピングセンターに入ることで、他の店舗の集客力も高まる効果や、特定の商品の集客力により、店舗全体の集客力が高まる効果のこと」。

また、「磁気の健康効果」ということもあるらしいが、どちらも人やものを引き付ける効果のことのようだ。

「人間は無意識のうちに自分の脳にあるカテゴリーにあてはめるように物事を理解している」といわれるが、これも「マグネット効果」と言われる。そうだとすると、人間は自分の脳にあるカテゴリーにあることに興味をもち、理解することができるということだから、自分の脳にそのカテゴリーがなければ、無意識のうちにそれを避けたり無視することになるだろう。確かに高齢になってくると、その傾向は著しくなるようだ。

合気道は武道であるが、合気の道を究めようとするためには多様な分野の知識や知恵が不可欠といえる。他の武道、スポーツ、芸道、宗教、哲学、科学などは無論のこと、少しでも多様な分野のことを知らなければならないだろう。狭いカテゴリーに閉じこもっていては、入ってくる情報も脳は逃してしまう。

何はさておき、脳に少しでも多様なカテゴリーの部屋をつくってやることが必要だろう。まずは小さくともいい。その後、それを大きくしていけばいいだけだ。0(ゼロ)と0.001には大きな違いがある。0.001と999は同じである。量が違うが、同質である。あるとない、有と無は、質の違いでもある。まずは質を変えて、その後、量を補充していけばいい。

脳にカテゴリーの部屋を増やすためには、他の武道、芸道、科学、芸術、宗教等に興味を持つことであろう。特に、人体と宇宙に関心が持てるとよい。興味が持てると、新しいカテゴリーの部屋ができるので、今度、それに関する情報が近づいてくれば、脳がそれを捕獲し、処理してくれるようになる。そうすると、ますます多くのことに興味を持つようになるだろうし、いろいろなことが理解できるようになるだろう。「マグネット効果」の表れである。

小さくかたまらず、小さなカテゴリーで満足しないで、脳のカテゴリーの部屋を増やしていかなければならない。異質のカテゴリーを増やすとともに、一つのカテゴリーを深めることである。脳にカテゴリーの部屋が増えるに従って、合気道の上達のための情報や知識や知恵を脳に取り入れ、理解できるようになるはずである。「マグネット効果」を上げるために、ますます視野を広げ、深める研究努力が必要だろう。