【第8回】 求心力

世間では、毎日々々いろいろな出来事があって騒がしい。今では世界中の出来事がテレビやラジオや新聞などで瞬時に知ることができるようになった。
電車の吊り広告で、"日本だけが騒ぐパリコレの秘密"という雑誌のタイトルを見かけた。最近の日本人はどうも、いろいろなことに世界の人が理解できないような騒ぎ方をするようだ。パリコレもそうだが、韓国の俳優のヨン様やイギリス人のベッカム、あるいはボジョレヌボーの解禁など、外国人だったらこんなに騒ぐことはないであろう。

人は得てして周りに振り回されてしまう。何故かというと、それは求心力が不足しているからである。求心力が働かないと、外へ外へと行こうとしてしまう。それで、外のものを追っかけるのである。
稽古でも、自分が本当に追及するものがないと、他の人のやり方に惑わされてしまうし、自分のやりやすいやり方へといってしまい、本流から外れてしまうことになる。

求心力を持つためには、深く々々追求するものを持つことである。それは何かというと、本当に身を入れて出来ることである。ビジネスでも金儲けでもいい。だが、自分の人生を本当に充実させてくれるものでなければならない。それも、一時的、一過性のものではなく、一生続けられるようなものでなければならない。
スポーツでもいいが、スポーツは一般的に本来勝負するものであり、年を取ると続けることが難しくなる。体を動かすなら、武道がいい。合気道などは、体が動く限り稽古を続けることができるし、誰にでもできる。だから世界中に普及しているのだと思う。

合気道で技を効かせるためには、遠心力と求心力を共に最大限出して、その2つの相反する力をゼロになるようにするのである。これを合気道では「呼吸力」といって、最も大切なことである。言葉をかえれば、合気道の稽古とはこの「呼吸力」の養成のためにやっているということもできる。遠心力だけではいい仕事はできない。

仕事を離れると、それまでの求心力となる仕事がなくなるので、往々にして不安になったり、生きていく張り合いも失いかねない。高齢者になっても世の中のことに迷わされないよう、求心力を養成するための合気道を薦める次第である。