【第6回】 節々を大切に

定年などで会社を退職するのは、人生の一つの大きな節目である。中にはこの節目があまりにも大きすぎて、次に何をしていいのか途方にくれる人もいる。 人生最後の節目は死ぬときであろうが、死を意識したときには本当の仕事ができるようだ。しかし、それではちょっと遅すぎる。節々を大切にすることを日ごろから心がけておかないと、大事な節目を間違ってしまう。

昔から、お正月には年の初めを祝い、朝の一日の始まりに神や仏に祈り、七五三に子供の成長を祈り、春が来たことや豊作を神に感謝する。道場でも賀詞交歓会、鏡開き、寒稽古、合気道大祭、演武大会、暑中稽古、越年稽古と、毎年繰り返して行われている。

人は季節々々で、会社の行事、地域社会の行事、家の行事、冠婚葬祭、道場の行事や作法、稽古事の行事などで儀式を行い、新たな気持ちになって次への新たなエネルギーを得ながら生きてきている。人は単調には生きられず、一つの節々で新たなエネルギーと気持ちになる必要があるようだ。

このような行事を軽視し、節々を大切にしないと、定年になってもそれまでと同じように、あるいはそれまでの人生の延長上で生きようとすることになり、問題や悲劇が発生する。  

合気道の剣は、松竹梅で竹の剣法と開祖植芝盛平翁は言っていた。節々を切れとのことであった。合気道は自分を鍛えることであるが、体では各節々を一つ一つバラバラに鍛えていくことが大切である。そしてそれを一つにまとめて使うと効果があがる。

現代人は利益をもたらさないものは迷信とか面倒くさいなどといって排除しようとするが、結局は単調な人生で終わってしまう。
昔から続いているものにはかならず大切な意味があるはずだ。
高齢者になり時間も余裕ができてきたら、節々を大切にして、これから人生の節目を自分はどう生きたいのか、よく考えてみてはどうだろうか。