【第4回】 高齢者になったら好きにやれ

人や状況によって多少の差はあるが、60歳を越したら自分の思うままに生きたいものである。80、90歳になってタバコが好きで吸っている人に、健康に良くないからやめたほうがいいなどというのは馬鹿げたことで、好きなら死ぬまで楽しめばいい。たとえやめて数年長く生きるよりも、楽しんだ方がいいと思う。

孔子も言っているように、「七十にして心の欲するところに従えども、矩をこえず」である。その当時は人生50年だっただろうから、今の平均寿命を70歳とすれば20歳の調整が必要になるので、80歳から90歳くらいとなる。

したがって若い内に好きなものを見つけなければならないのだが、ただ好きなようにやるだけでは何事もうまくいかない。自己流になって発展性がないので、力強さも美しさもなく、誰も認めてはくれないだろう。物事には基本があり、一つのパターンや法則があり、それがないものは一般的に成就しない。若い内に、いやでも基本を学ばねばならない。

年を取れば、自分の生きる道ややることがはっきり分かってくるし、方向性が決まる。そうなったら、自信をもって突き進むべきである。

合気道の修行でも、若い内は先人が残してくれた型をしっかり身につけることが大切で、少しでも多くのものをどんどん吸収すべきである。ただし、安易な妥協をせず、自己流にならないよう注意しなければならない。
それができれば、年を取れば今度は自由に、好きなように動けるようになるし、それが自然にみえるだろう。
基本原理に則った自由な動き。これが高齢者の道であろう。

合気道の開祖の植芝盛平翁はよくいっていた。「50,60ははなたれ小僧、まだ何も分かっていない」と。50、60歳までは古をみる稽古をきっちりとしなければならない。何度もやっている技でも、より深く掘り下げていくミクロの稽古をしなければならないし、社会や地球や宇宙を考えるマクロの修行もしていかなければならない。

孔子がいうように、思うままに生き、それが天の理に合っていればどんなに素晴らしいことか。そうありたいものである。