【第77回】 顔・顎のリラックス

道場の稽古ではみんな真剣にやるため、緊張することが多い。技をかける時は相手を何とか倒そうとしたり、受ける方も怪我をしないように、あるいは相手の技を少しでも盗もうとか、緊張するものである。武道やスポーツではある程度の緊張が必要である。緊張によって「闘争か逃走か」と呼ばれるホルモンのアドレナリンを出し、交感神経を興奮させ、運動器官への血液供給増大を引き起こさせ、戦闘態勢をつくる必要があるからである。

しかし緊張はしても、顔まで緊張させるのは避けなければならない。何故ならば、顔が緊張すれば顎が緊張し、肩に力が入ってしまい、体幹からの力が手先に十分伝わらなくなるからである。その理由は、
「顎は、鎖骨と胸鎖乳突筋でつながっている。鎖骨は胸鎖乳突筋で上下、前後、左右に動くが、胸鎖乳突筋の緊張は胸鎖関節を固定させ、胸鎖関節と連動して動く肩甲骨の動きも固定してしまうので、腕は肩を支点に動いてしまい、肩に力が入った状態になってしまうのである。」(スポーツ選手なら知っておきたい『からだ』のこと)(大修館書店)

世界大会やオリンピックで優勝する選手は、だいたい負けた選手達よりも緊張したところが少なそうで、顔もリラックスしているように見受ける。最近、日本選手の成績は芳しくないようだが、顔に緊張感が多く見られるのが気になる。合気道の稽古は緊張をしつつも、しかめ面などせずに、リラックスした顔でやったほうがいいだろう。