【第658回】
天地の気と息をつかう
前回の『第657回 魄の稽古から魂の稽古へ』では、
「それでは魂の稽古とはどのような稽古であるかを考えてみると、まず、生命力である気による稽古である。「気」には己自身のものと、己以外のもの、つまり自然や天地、宇宙の気があるが、先ずは己の生命力をつかって技をつかう稽古をすることであると考える。己の中にある気を最大限に活用するのである。
そして次に、自然や天地、宇宙の「気」をつかわせて貰っての稽古ということになる。」と書いたが、今回は、この「自然や天地、宇宙の「気」をつかわせて貰っての稽古」について書いてみたいと思う。
まず、天地・宇宙と結んで、つかわせて頂いている気が、魄ではなく、また、己自身のモノではなく、天地・宇宙の気(生命力)であるという事を確証しなければならないだろう。
この気の力は、相手と結び、くっつけてしまい、相手を浮かせ、相手の力を奪ってしまうので、この力は自分を超越した天地・宇宙の気(生命力)であると考える。呼吸法でも、入身投げでも、天地投げでも相手を浮かせてしまい、相手の身体を自由自在に導けるのである。
次に、天地(宇宙)の力である「気」をどのようにしてつかわせて貰うかということになる。私が今やっている稽古法を書いてみる。
- 己と天を結ぶ。つまり日月と結ぶのである。日月とは天であり、日は昼間の天、月は夜の天であると考える。日だけでは、夜の天の結びはできないことになる。
この天と結ぶのが大事である。この天との結びをしないと、地との結びもできないことになり、大きな力が得られないことになる。
- 天と結んだら、息を出して下腹に溜める。天と下腹(体)が結び、天と腹とに引力が発生し、引っ張り合うことになる。
- 張っている下腹を緩めると、息と気が天との引力によって胸に上がってくる。と同時に、下腹から息と気が地に流れ、そして地からその抗力としての気が腹に戻ってくる。ここで手を掴んでいる相手は浮き上がってくることになる。
- 胸まで気が上がってきたところで(縦)、地からの気と共に、今度は胸で息を引く。(横)相手は更に浮き上がってくることになる。
己を中にして天と地の働きをよく観察してみると、まず、天と腹が結ぶと同時に、天と腹の引っ張り合いがはじまる。そして腹を緩めると、天と腹の緊張が緩むと同時に、今度は、腹と地の押し合い、引っ張り合いの引力作用が始まる。天と地と体は結び合、引っ張り合っていることが感じられる。
このように天地・宇宙の気を体に満たせて、天地・宇宙の気の流れ、息に則って己の息と気と体をつかえば、人知を超えた力が出るのではないかと考えているところである。
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