【第62回】 段階と順序

稽古事には稽古の段階に応じた順序があり、やるべきことがある。順序に従ってやるべきことを一つ一つやっていかないと合気道の体もできないし、技も効かないものである。

人は幼児から少年、青年、壮年、老年と年を取っていき、腕力、気力、智力などが年とともに変わっていく。若い内には若い時にしかできないことをやっておかないと、年をとってからやろうとしても体が言うことをきかなかったりするし、無理をすれば体を壊してしまう事にもなりかねない。稽古をするには若いときには青年らしい稽古、次には壮年の稽古、そして年をとってくれば老年の稽古と、年齢に見合った段階での稽古をしなければならない。

技を覚える稽古として、力を出すための筋肉を鍛える順序がある。技は力を効率的に使うものであるから、この順序を間違えれば効率的な力は出ず、技は利かないことになる。

誰でもよくやる二教の裏技がある。相当に力の差があれば決めることができるが、あまり力の差がなかったり、その上に受けの相手が頑張るとなかなか決まらないものである。初心者の多くは、こちらが少し力を入れているとこの二教裏ができないようだが、それは受けが強いからというよりは、むしろ力の入れ方、鍛え方が分からないことにある。二教の裏は、まず両手で相手の手首を絞り込むのだが、一般にこの絞りが甘いか、あるいは左右の手の力の陰陽のバランスが取れていないのである。この絞りがなければ決してこの二教裏は上手く効かない。従って、二教裏の稽古のはじめはこの絞りの稽古であろう。絞っただけでも効くようになるまで、鍛錬すべきである。例え絞って相手に効かなくても、一生懸命やっていれば必要な筋肉と体ができ、いずれ出来るようになるはずだ。

絞りの次に必要なことは、絞った相手の手首を肩に密着し、肩できめることである。つまり、ここでは両手の絞りと肩の動きの方向の力を働かすことになる。 この段階を過ぎれば、相手が肩や胸に触れた時に、手を使わずに相手を飛ばしたり、倒したりすることもできるようになる。これらの段階と順序を経なければ、いくら力んでも二教の裏は決められない。やるべきことを、焦らず順序よくやるほかはないだろう。