【第474回】  さらなる陰陽と陰陽の組み合わせ

開祖は「合気道は、地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで・・・技を生み出してゆく」(『合気神髄』)といわれている。手を左右、陰陽につかい、足も左右、陰陽につかい、そして同じ側の手と足を一緒に陰陽で、しかも息の陰陽と組み合わせてつかうのである。

手と足の陰陽が乱れたり、同じ側の手足の陰陽が乱れれば、技は出てこないことになり、合気道の技とは違ったものになってしまう。ここまでは、これまで書いたことであるが、陰陽と陰陽の組み合わせには、さらなる組み合わせがある。それは、受けの相手の手足の陰陽とも組み合わせなければならないことである。

合気道は相対稽古で技を生み出し、宇宙の法則を知り、己を知り、宇宙と合気していく、と考えているので、技の生み出しということが重要になる。しかし、この技の生み出しというのは、容易なことではない。受けの相手は他人であるので、自分の思うようには動いてくれないからである。

まず、技の生み出しをする場合に必要な事は、1+1=1にすることである。受けの相手を自分の分身にしてしまうのである。

そのためには、受けの相手と接するところで、相手を引力でくっつけてしまわなければならない。そして、この結びを最後まで切らないようにしなければならないのである。

相手と結ぶのも容易ではないが、さらにその結びを切らずに相手に技をかけていくのは、なおさら容易ではない。特に、取りと受けの双方が気を入れて一生懸命にやれば、相手にがんばられたり、逃げられたりして、なかなか技にならないものである。

実は、受けの相手ががんばったり、離れてしまったりするのは、その99%が技をかける取りに原因がある、と見る。いうならば、受けががんばるよう、離れていくように、技をかけているということである。手を振り回すようにつかう、手足の陰陽の組み合わせ、つかい方を間違えている、等々、法則違反をしているのである。

話が横道にそれたので、本題の「さらなる陰陽と陰陽の組み合わせ」に戻そう。技をかける際に、己の手足と息の陰陽と陰陽の組み合わせが身についたら、今度は受けの相手の手と足も陰陽で動くようにしなければならない。つまり、受けの手が右左と陰陽に動き、また、足も同じように右左と規則的に陰陽に動くようにするのである。さらに受けの手と足が右左、陰陽で規則的に動くと、違和感を感ずることなく、反抗心も起こらないで、技の生み出しができるようだ。

それがよく分かるものが、「正面打ち一教」である。技がうまく生み出されるときには、技をかける側はもちろんだが、受けも同じように手と足が左右、陰陽で規則的に動いている。他の基本の形や呼吸法でも、受けの相手も左右陰陽で動いているはずである。

もし受けが左右陰陽で規則的に動かなければ、技をかける側がそれを阻害しているはずである。それが時として、受けががんばったり、離れてしまう事になるわけである。

よい技をつかう技の生み出しのためには、技をかける側の陰陽と陰陽の組み合わせだけでなく、受けの相手の陰陽ともさらに組み合わせなければならないことになるわけである。