【第469回】  法則を教えてくれる基本技 その6.「潮の干満」

合気道は技の錬磨によって、宇宙の法則を身につけ、そして、それを技に現わし、宇宙の営みに近づいていくので、まずは宇宙の法則を見つけなければならない。合気道でそれを教えてくれるのは、「技」である。合気道の「技」は、宇宙の営みを形にした宇宙の条理・法則でつくられている、といわれるからである。

「技」を繰り返し稽古していけば、どんどんその法則を見つけることができるようになる。技が法則を教えてくれるわけである。

合気道の技、特に基本技には、すべての宇宙の法則が入っているはずだが、法則によってわかりやすかったり、身につけやすい技があると思う。それ故、法則がわかりやすいと思われる技を、「法則を教えてくれる基本技」というタイトルで、シリーズで書いている。

今回の第6回は、「潮の干満」という法則が、わかりやすく、身につけやすい技・基本技を紹介する。

「潮の干満」は宇宙の営みであり、真理であり、条理であり、法則である。この法則を取り入れて武技を生まなければならない、と合気道では教えている。天の呼吸に地の呼吸である「潮の干満」を合わせて、技を生み出していくわけである。これを、開祖は「天の息と地の息と合わして武技を生むのです。地の呼吸は潮の干満で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります」といわれている。

この「潮の干満」がわかりやすく、身につけやすい基本技は「半身半立ち四方投げ」だろう。持たせた手に、天の呼吸によって受けの相手をくっつけてしまい、次に地の呼吸、つまり胸式呼吸で、あたかも潮や波が引いたり満ちたりするように、腰を中心に、正座している左右の足の重心を陰陽に変えながら、地と結んでいる腰と腹で相手を回すのである。

体づかい、息づかいができてくると、地から湧き上がるような強力な呼吸力が出るようになって、相手をくっつけ、一体化した相手を自由自在に動かせるようになる。この「半身半立ち四方投げ」では、「魂のひれぶり」と思われるものもよく感じられるようだ。

開祖は聖典の中で、技をつかうためには「天の呼吸、地の呼吸(潮の干満)を腹中に胎蔵する。自分で八大力の引力の修行をして、陰陽を適度に現し、魂の霊れぶりによって鍛錬し、この世を淨めるのです。(つまり、技をかける)」といわれている。この地の呼吸(潮の干満)のための稽古には、「半身半立ち四方投げ」が最適ではないかと考える。