【第464回】  法則を教えてくれる基本技 その1.「陰陽の法則と正面打ち一教」

合気道の技はすべて宇宙の法則に合していなければならない、といわれている。法則に則ってない技をつかっても、効かないだけでなく、体を壊してしまうことにもなるのである。ということは、合気道の技は宇宙の法則、宇宙の真理を表わしたものである、ということになる。開祖は「宇宙の真理のごとくは技に表わすことが出来ます」ともいわれているのである。

しかしながら、宇宙の法則、宇宙の真理とは何か、どうすれば技に取り入れることができるのか、が問題となるだろう。

では、どうすればそれが解り、技に取り入れていくことができるようになるか、研究していかなければならないだろう。

何よりもまず、技には法則があるという理を確信して、技の錬磨をしていかなければならない。ただむやみに稽古を続けても、上達はなく、合気の道を進むことはできない。千葉周作は「理より入るは上達はやく、技より入らんとするは上達おそし」(剣法秘伝より)といっている。

次に、開祖がいわれている法則を、技、つまりふだんの気形の稽古から見つけ出し、技に組み込んでいくこと、と考える。例えば、陰陽、螺旋、十字、円の動きの巡りあわせ、等々である。技を科学化して、湧出していくわけである。

そこで、それらの法則をどうすれば見つけ、身につけることができるか、ということになるが、その解答は、合気道の基本技の中にあるのである。正確にいえば、すべての基本技にすべての法則が入っているはずである。ただ、法則が解りやすく、身につけやすいものは、基本技によって違うようなので、その法則を取り入れやすい技(気形)を選んで、技を錬磨すればよいと考える。

これから何回かに分けて、いろいろな法則を教えてくれる最適な基本技と、その法則の取り入れ方などを研究してみることにする。

その1.として、「陰陽の法則と正面打ち一教」を書いてみよう。
一教、とりわけ正面打ち一教は、陰陽、つまり「陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで、技を生み出してゆく」技としては最適である、と考える。他の技でも同じだが、とりわけ正面打ち一教では、陰陽を正しくつかわないと技にならないからである。

まず、手の陰陽であるが、右相半身の場合、@相手の打ってくる手をこちらの手刀で受け、右手が陽で働くA陰で待機していた反対の左手が陽に働き、相手の肘をおさえるB陰で待機していた右手で、相手の手先を腰と共に十字に返しながら引き出すC肘にかかっている左手に体重をかけながら、下に落とし(陽)D右手に引っかかっている相手の手を、こちらの右手を槍で相手を突くようにつかって進み、E相手の腕の上にある左手に体重をかけて、相手の体を地に沈め、Fもう半歩進みながら、右手で相手の腕を鈍角に伸ばしながらおさえる。

これで、右手と左手が陽と陰に、規則正しく働くわけである。これが、手の陰陽の法則である、と考える。

次に、足の陰陽である。上記同様、右相半身とすると、@右足を相手に向かってまっすぐ進める。右足に重心がかかり、陽として働く。相手の手(腕)をこちらの手刀で結ぶA相手と結んでいる手刀の箇所を動かさずに、左足を陽に相手に向かって一歩進めるB腰が十字に返ると同時に、右足に重心が移動し、右足が陽になるC左手に体重をかけると、左足に体重が移動し、左足が陽に働くD右足を陽に進めながら、相手を槍で突くようにしE左手と左足に体重をかけながら、膝を相手の横腹を突くようにして地に着けF右足に体重を移動して、相手の手首を手刀でおさえる。

足も手と同様に、右左陰陽で、規則正しく働くわけである。だから、これが手と足の陰陽の法則ということになるだろう。

さらに、手の陰陽の法則と足の陰陽の法則は、@からFの番号に沿って、右と左の陰陽が同時に働いていることがわかるだろう。つまり、これが前述の「陰陽と陰陽とを組んで、技を生み出してゆく」ということである、と考える。

陰陽の法則がわかりやすく、また身につけやすく、そして「陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで、技を生み出してゆく」技を身につけるためには、「正面打ち一教」は最適の基本技であると考える。