【第432回】 小手先で捌(さば)かない

合気道は技を練磨しながら精進していくが、技をかけて収めるまで、主に手でやるわけである。だから、手で技をかけることに間違いはないが、手で技をかけてはだめである。だめというのは、それでは技が効かないということである。なお、ここでいう手とは、手首から先の小手・小手先の狭義の手ということになる。

手はつかうが、手はつかわない、というのは、合気道のパラドックスであるが、正反対のものが隣り合わせにくっついているのだから、真実であるはずだ。一面とか片方しかないものは、不自然であり、正しくないと思うからである。

初心者の技づかい、体づかいの悪い特徴のひとつが、小手先捌きであろう。小手先で捌くとはどういうことか、簡単にいうと、小手先から動いて技をかけることである。

なぜ小手先をまず動かすのがいけないかというと、大きい力がじゅうぶんに出ないことと、相手をくっつけてしまう引力のある力が出ないからである。

小手先の力とは、それほど大きいものではない。期待しているほど大きいものではないのである。それ故、小手先を動かして出す力よりも大きい、引力のある力を、技をかける小手先から出すようにしなければならない。

そのためにはどうすればよいか、考えなければならない。まず、なぜ初心者が小手先さばきになるか科学してみると、主に次のような原因があるだろう:

そこで、小手先で捌かないようにするには、どうすべきかということである。
上記の小手先でさばいてしまうことになる原因を踏まえて、その問題を次のように解決していけばよいだろう。 また、小手先は基本的に体の中心線上にあるようにする(両手の場合は、両手の中間が体の中心線上になる) 等など。
初心者が小手先のさばきになっているのは、これがまだできないからといえよう。

合気道の技は、円の動きの巡り合わせからできているから、相手を自分の円の動きの中に入れなければならない。小手先を動かしてしまうと、円にはならず、直線で相手の円の中に入ってしまうことになる。小手先が円の動きになるためには、その対照である腰腹を動かして小手先をつかうようにしなければならない。

初心者は、前述のように小手先を始めに動かしてしまうが、上達するに従って、最初の円の動きができるようになるものだ。これは、それほど難しくないようである。けれど、次に第二の円の動きに入るところが、容易ではないように思える。つまり、第二の円で動くべきところで、また小手先で捌いてしまうのである。

例えば、横面打ちが好例である。相手が横面を打ってきたのに対して、うまく体を捌くのはよいのだが、その後、どうしても小手先でやってしまうのである。ここを抜け出すのは難しいようだが、なんとか抜け出さなければならない。そうすれば、あとは極楽である。これで、小手先での捌きが出なくなるはずである。