【第417回】 合気道の鍛錬法

開祖は「合気道は気形の稽古と鍛錬法である」といわれている。気形の稽古とは、正面打ち一教などの稽古であると思うのだが、では、次の鍛錬法とは何を鍛錬するものであろうか。

それについて、開祖は次のようにいわれている。「心と肉体とを一つに結ぶ気を、宇宙万有の活動と調和させる鍛錬である」つまり、「気」を鍛錬することである。

「気」とは力の元であり、エネルギーであると考える。そして、「気」には、物の気と、宇宙の気があるようだ。物の気とは、物がもっている気、物が発散する気だろう。宇宙の気とは、宇宙のひびき、言霊であり、宇宙生成化育の力の元ということである、と考える。この物の気と宇宙の気を、空の気と真空の気というのであろう。開祖はまた、この「気」を「愛」ともいわれている。

「気」を鍛錬するためには、まず心と肉体を気で結ばなければならないだろう。心と肉体は別物であるので、肉体は心の思う通りにはなかなか動いてくれない。また、心も肉体が希望するようには働いてくれないものである。この心と肉体を結んで、一つにして働かすことができるのが「気」なのである。

実際に技を使う際には、心と肉体を一体化するのは難しい。まずは、息に心と肉体をのせてやると、うまくいきやすいものである。生産びの息使いである。息によって、心と肉体とが一つに結ぶわけだから、ここには「気」があるはずである。イキのキは「気」なのかも知れないし、他の「気」が働いているのかも知れない。

具体的には目に見えないが、例えば強そうな人や上手な人には、何となく近寄りがたく感じるものだ。それは、その人から何かが出ており、それを感じるからだろう。それは、目には見えないが、見ることができる、魄力、気力というものではないだろうか。

さらに、心と肉体とを一つに結んだ気を、宇宙万有の活動と調和させるのである。調和させる「宇宙万有の活動」とは、開祖によれば、例えば一霊四魂三元八力の生ける姿、天火水地の十字の交流によって生みだされる言霊の響、右に舞い昇り左に舞い降りるみ振舞の摩擦作用の行為、すべてに緩急が現われ、天底から地底へ、地底から天底へ、螺旋を描いて常に生命をたどっている等などといわれているものであろう。つまり、「宇宙万有の活動と調和させる」とは、その宇宙万有の条理・法則に則って、技と業をつかっていかなければならない、ということになるだろう。

自分の心と肉体を結び、そして、稽古相手とも結ぶことができるようになると、気が働いたことになる。そうなれば、相手は自分の一部の分身になるから、相手も自分自身と同様に気で結んで、自由に動かすことができるようになる。

ここには引力が働き、両者が結び合っているわけだが、その引力は求心力と遠心力が十字で円に働く力である。この力が呼吸力である、と考える。この呼吸力を練ることと、そして少しでも多く、そして深く、宇宙の法則を身につけていくことが、「合気道の鍛錬法」であると考える。