【第408回】 人間と機械

合気道は相対で技をかけあって上達すべく稽古していく。若い内は、何とか相手を投げたり抑えたりすることを目標に、稽古に励むものである。しかし、体が自分より大きかったり、力が強い相手には、思うように技がかからないので、体力をつけようと鍛錬する。

年を取ると、そんな元気もなくなるからだろうか、そのような考えも変わってくるものだ。今は科学技術が発達した科学文明の社会であることも、実感するようになる。

人間を支援してくれる機械やロボットやコンピュータなどが、人間の仕事をやる時代である。今の大学入試問題のほとんどは、コンピュータで解ける問題だという。チェスの世界チャンピオンや、将棋のプロ棋士も、コンピュータに敗れている。

いずれ鉄腕アトムのようなロボットが出現するだろう。そのような場合に、ロボットを相手に稽古し、相手を力で極めよう、抑えようとしても、それは不可能だろう。

しかし、ロボットと手合わせしても敵わないのでは、合気道の稽古に意味がない、ということではない。というより、そのようになっても、意味のある稽古をしていかなければならない、ということが大事なのである。

人間には、人間固有の能力がある。それは、想像力と創造力である、といわれている。コンピュータがいかに優れていても、そのソフトは人間がつくったものである。機械もロボットも、人間が創造したものである。

この創造性はどこから生まれるかというと、実技から生まれるという。つまり、創造性は、頭だけで考えるだけでは駄目で、実技で見つけ、実技で磨け、ということである。理論と実技は一体で学ばなければならない、ということである。科学技術も、抽象的な理論で考えているだけでなく、技能を通した方が創造力が働く、ということであり、ある程度の技能を持っている方が、創造的な仕事ができるだろう、というのである。

合気道は想像と創造の武道である、といえよう。宇宙の営みを形にした技を身につけ、練磨していくからである。目に見えない、あるかどうかが分からないものを見つけ、身につけようとしているのである。

それには、想像力と創造力が必要である。その力を持つためには、ある程度の技能が必要になるはずである。これが、コンピュータやロボットとは違う、人間だけが有している固有の能力であるだろう。

この人間固有の能力を追究していくことが、合気道の稽古の目標になっていけば、鉄腕アトムとも仲よく、楽しく、稽古ができるだろう、と考える。

参考文献
日経産業新聞 Techno Online 「人間固有の能力 創造性 実技で磨け(四日市大学 新田義孝教授)