合気道を技の練磨で精進していくためには、自分の体と心をどんどん掘り下げていかなければならない。掘り下げていくということは、今いる世界から見えない世界へ行く事だと思う。なぜ見えない世界に行かなければならないかというと、今まで日常生活で見えなかったものを見、感じなかったことを感じるためである。
しかし、深い心の世界、魂の世界に入っていくのは、容易ではない。俗世のことを引きずり込んだり、稽古への集中力が欠けたりして、稽古に没頭できなければ、深いところへは入っていけないし、さらなる精進も難しいことになる。
稽古に集中し、没頭していくと、体から「これはまずい、これはいい、ああしろ、こうしろ」等などのメッセージが送られてくる。また、相手の心ともつながってくる。こういう状態に入ると、よい稽古ができてくるもので、楽しくなるし、合気道のすばらしさや摩訶不思議さ、人の体の複雑微妙な不思議さ等などを感じ、時間や疲れなどを感じなくなる。
このような状態に入ると、よい仕事ができるのであれば、そのような状態に入って行くのがよいことになるだろう。このような状態を、心理学の世界では「フローな状態」とか「フローな心の状態」といって、心理学者のミハイ・チクセントミハイナ博士(写真)によって提唱されたものだという。
博士は「フローな状態」を、集中力が抜群で、活動に完璧に没頭できる心の状態、といっている。「フロー(英語: Flow) 」とは、人間がそのときしていることに完全にひたり、精力的に集中している感覚に特徴づけられるもので、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における精神的な状態をいう。
博士は、その著書『フロー体験 喜びの現象学』で、フロー状態になると、次の8つの要素の体験ができる、と述べている。