【第383回】 相手が倒れない原因
合気道は、通常、相対で技をかけ合いながら、技の練磨をしていく。だが、なかなか思うようには、できないものである。思うようにできないということは、技をかけても相手が倒れてくれなかったり、相手にぶつかって動きが止まったりしてしまうことである。
長年、稽古していると解るものだが、技がうまくかからず、相手が倒れてくれない原因は、ほとんどの場合、受けを取る相手ではなく、技をかける自分にあるといえるようだ。要は、相手が受けを取れないようにやっている訳である。
合気道の稽古は、強い弱いの勝ち負けの稽古をしているのではない。受けは気持ちよく受けを取ろうとし、技をかける相手のやり方を勉強するつもりで受けを取っているであろう。だから、理論的にはうまくいくはずである。しかし、その受けの期待に応えなかったり、平和な思いを乱すことになると、相手が倒れてくれない訳である。
平和を乱す理由は無数にあるが、以下にいくつか書いてみよう。
- 受けの相手を倒そうとする心や、気持ち、意識が強すぎること。受けの相手はそれに気付き、防御の態勢に入ってしまう。
- 相手とはじめに結ばずに動いて、技をかけようとすること。それでは1+1=2で動くことになり、相手が自由に動いてしまうので、技がかからない。それでも相手を倒そうとすると、ぶつかったり、争いになる。
- 体の末端の手先から動かすこと。体の中心の腰腹から先に動かないと、相手はついてこない。
- 相手と接している接点である支点を、動かしてしまうこと。支点に力を加えて動かしてしまうと、相手が頑張ってくるので、倒れにくい。
- 足を左右交互に規則正しく使わないこと。足つかいが乱れたとき、動きは中断し、技は効かない。特に両足が揃うと、必ず体の動きが止まるので、手だけを動かしてしまうことになる。
- 手を左右交互陰陽に規則正しく使わないこと。どうしても陽・陽と使いがちになるので、注意する。
- 息の使い方、吐く、吸うが逆であること。吐くところを吸い、吸うところを吐いてしまうのである。相手と結ぶときには吐く、そこから技をかけていく間は吸う、相手を投げたり抑える際は吐く、とならなければならない。技をかけようとするときに息を吐いてしまうと、相手を弾いたり、相手にがんばられたり、自分の息が無くなってしまい、技と動きが切れてしまう。
- 息づかいが十字になっていないこと。上記の息づかいと関連して、十字に、つまり、縦と横に使わないと、相手とぶつかって動きが止まってしまう。
ふしぎなことに、上記のことに違反しないような動きで技をかけられると、上級者、初心者に関係なく、一瞬に気持ちよく技がかかるものであり、思わずやったね、とほめてやりたくなる。
もちろんのことだが、筋肉、肺や心臓など、体がある程度鍛えられていなければ、相手はなかなか倒れてくれないものである。まずは、体を鍛え、力をつけなければならないのは、いうまでもない。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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