武道では礼儀を重んじる。礼に始まって礼に終わる、といわれるくらいだから、武道を学ぶ子供たちも厳しく礼儀をしつけられる。
しかし、礼儀の大事さやその存在意義はある程度わかっても、その意味するところがわかってない稽古人が多いようである。それ故に、形だけの礼儀になっているように思える。
時代により、また社会体勢、国や地域により、礼儀の意味や形は違うが、今回は今の武道家としての礼儀について考えてみたいと思う。
礼儀について辞書を見てみると、「礼儀とは、社会の秩序を保ち、他人との交際を全うするために、人としてふみ行うべき作法」(「大辞林」)とある。なお、礼も「社会の秩序を維持し、人間関係を円滑に運ぶために守らなければならないしきたり」とか「敬意のこもった態度・振る舞い・行為」とあるから、この度は礼と礼儀を同格に扱うことにする。
われわれ合気道家も、合気道の社会、また武道の社会に生きているわけだから、この社会秩序を保ち、そしてこの社会で交際していくためには、合気道・武道社会の礼儀を無視することはできないだろう。
礼儀は「社会の秩序を保つための作法」というように、礼儀にはその社会を構成する対象がある。合気道の稽古の場合、下記のようなものが考えられるだろうが、礼儀は対象によって意味と形が違ってくる。
礼儀の対象 | 形 | 礼儀の意味 |
---|---|---|
神 | 拝礼、礼拝 | 俗界から神界に入る儀式 神や先人との一体化 |
師範 | 敬礼 | 神からの伝承者として敬意を示す 指導を乞う |
目上の人、先輩 | 敬礼 | 教えを乞う 胸を借りて試させて貰う |
同輩 | 軽礼、略礼 | 共に頑張ろう |
後輩 | 返礼、答礼、略礼 | 頑張りなさいよ |
よく知らない人 | 目礼 | 敵にしない |