【第307回】 宇宙の法則を実感するために

合気道は技の練磨によって精進するわけだが、ただ時間と労力をかければ精進できるというものではない。もちろん時間も労力もかけなければ駄目だが、それは必要条件であっても、十分条件ではないからである。それに、これだけやれば精進するというような、魔法のような十分条件などないのである。

では、精進するには何が必要かというと、われわれ凡人においては、必要条件を積み重ねることしかないだろう。しかしながら、必要条件は残念ながら大小無数にあるようだ。

合気道というのは、合気之道ということであり、宇宙のエネルギー(気)と一体になる、つまり宇宙との一体化へ精進するための道ということだろう。

従って、まず道があることを認識しなければならない。次に、合気之道にのらなければならない。道にのらなければ道を進むことはできない。道にのったら後は精進するのみだ。

しかし、これがなかなか難しい。別に道にのらなくても稽古は続けることができることもあるが、実際どうすればよいかがはっきりわからないからであろう。

合気道の技は宇宙の営みを形にしたもので、宇宙の法則に則っていると教わっているが、これが理解できないと精進は難しいはずである。宇宙などというとオーバーになるので、とりあえずは人間が生きていく上で当てはまる法則、そして合気道の技の練磨において例外なく合致し、相反しないことと考えればよいだろう。

まず、合気道の技には法則性があることを認識し、実感し、そして確信しなければならない。これができなければ、合気之道にのり、そして合気の精進をするのは難しいのである。

一つでもよい。法則を見つけ、それを会得することである。それが、合気之道にのるための「梯子(はしご)」になるのである。

その「梯子」に最適な法則としては、「足を左右、陰陽に規則正しくつかう」のがよいと思う。右、左、右、左・・・と歩を進めるのである。宇宙の法則であるから、普遍性、汎用性があり、何ものにも反しない。この技には有効だが、この技には有効でない、ということはない。すべての合気道の技に有効なはずである。

技がうまくかからないという場合は、大体はこの左右の法則に反している場合が多いようだ。うまくいかなかったときは、足の使い方をこの法則に則るように修正すればよい。また、新しい技をかける場合も、この左右の法則に則って動けばよい。この法則に沿っていれば、技はかかりやすくなるはずである。

足を左右交互に陰陽で使うことが身についてくると、技に法則性があることが実感できるようになるだろう。宇宙の法則を実感する端緒である。そうすると今度は、次の法則を見つけようとするものだ。そして、合気道の技からどんどん法則を見つけて、身に着けるようになる。

足を左右交互に使うことが「梯子」となり、合気之道にのり、進むことになる。そして、宇宙の法則を実感していくことになる。まずはその「梯子」を立てることがMUSTである。