【第293回】 いろいろな稽古

合気道の稽古は、相対で技をかけたり、受けを取って体をつくり、技を練っていく相対稽古法であり、あるいは指導者が示した技の形を、複数の相対組がくりかえし稽古するものである。道場によって、道場の広さや稽古人の数が違うし、また、その日によっても人数が違うだろうから、道場の稽古人密度は道場により、そして日や時間帯によって変わることになる。私が通っている道場の稽古人密度も、毎回違っている。

入門した当時の若い頃は、稽古人はそれほど多くなかったので、稽古人密度は低く、元気に大きく動いて稽古をしていた。時には密度が高い時間帯なのに同じように広いスペースを使って受けを取ったり技を掛け合ってしていて、周りには迷惑をかけたことと、今は反省している。

近年は稽古人も増えて、超過密で稽古をしなければならない時間帯もふえてきた。もちろん、密度の低い時や時間帯もあるが。稽古人の中には、超過密で人が多く、場所がなくて十分稽古ができなかったとこぼす人もいるが、残念である。なぜならば、この超過密がよい稽古になるからである。

ふだんより混んでいて稽古が思うようにできないということは、技の掛け方や受けの取り方をいつも同じようにやっている、ということになる。つまり、道場が混んでいようと空いていようと、稽古のやり方が変わらないということである。これは、自分の稽古法がいつも決っているわけである。これでは、混んでいれば、周りの稽古人とぶつかってしまい、思うように稽古できないのは当然である。

稽古は密度に合わせ、利用できるスペースに合わせてやらなければならない。混めば混むほど、場所を取らないようにやるのである。その為には、一つは動きを小さくやることである。前受身は畳一畳に収まるように小さく取れなくてはならない。自由時間に、一畳に収まるような受身の稽古をするのがいいだろう。

もうひとつは、相手を投げる時に、横ではなく縦に上げたり落とすのである。非常に混んでいる場合は、真上に上げて、自分の腹の下、真下に落とすようにするのである。畳半畳あれば十分なはずである。

逆に、空いている時は、真下ではなく横に投げてやればよい。つまり、道場の密度によって、垂直から水平へと角度を変えていけばいいのである。

稽古は、道場密度などによる受動的なものではなく、いろいろな状況を想定して、自由自在にそして積極的にいろいろな稽古をすべきであろう。

超過密を想定して相手を上下に投げたり、小さく動く稽古とは逆に、空いている時、又はそういう想定をして、大きく動く稽古をするのもよい。その他にも、技を超速で掛けたり、超スローで掛ける(これは技が切れたり、相手との結びが切れやすくなるので中々難しい)こともできる。

また、自分の力を目いっぱい出して、力一杯やったり、力をできるだけ入れないようにやったり(その分、気持をいれる)、時には、相手によって、厳しくやったり、また、やさしくやったりするのである。

自分の稽古課題を別にしても、道場密度や相手によって、稽古は変えなければならない。いつ、誰と稽古をしても、同じ稽古をしているようでは、道場密度や相手に不平をいうだけとなり、上達はないだろう。どんな状態でも、どんな相手とも、稽古ができ、上達するようにしていかなければならない。

日頃から、いろいろな稽古をし、どんな状況でも上達に結びつくようにしていきたいものである。