【第28回】 力ではロボットに適わない

合気道の稽古は通常二人で組んでやるので、どうしても競争心がおき、力に頼ったものになってしまう。そして力の強いものが弱いものを牛耳る傾向になる。

日本経済新聞(2006年10月23日)に「筑波大学発ベンチャー企業がロボットスーツ(写真)の量産体制を整える」というニュースが掲載された。リハビル用に開発されたものだが、重量物を持ち上げるにも使えるという。まさにこれまでの漫画の世界にあったものが現実になってきて、誰でも超人的パワーを出せるようになってきたのである。2050年にはロボットサッカー大会が計画されているが、近い将来はロボットのオリンピック、空手や柔道やプロレスリングの大会が行われることであろう。その場合、生身の人間のやってきたオリンピックや国際試合の意味はどうなるのだろう。

人はこれまですこしでも重い物を運べるよう、機械をつくったり、または、肉体を鍛えてきた。力を鼓舞するためにオリンピックや世界大会が催されている。しかし、ここにきてロボットスーツができたことにより、また、ますます人間より力の強いロボットが開発されるだろうから、人間が自ら力持ちになることの意味も薄くなったと思う。少しくらい力が強いといっても、力ではロボットには適わないだろう。つまり、合気道や武道でも力の稽古は意味がなくなるということでもある。従って、真の合気道の稽古はこのようなロボットが出現してもそれに関係なしに探求するものでなければならない。合気道の上達するためには、稽古に対する新しい考え方をするか、または、開祖が考えられた合気道の原点に帰る必要があろう。