【第271回】 鍛錬は末端から、遣うのは中心から

人間の体は、多くの骨、関節、筋肉、筋などでできている。合気の技は、自分の体、つまり骨、関節、筋肉、筋などを最大限に活かしてつかわなければならない。

しかし、人は、初めから武道の体をもっているわけではないので、武道の体をつくっていかなければならないことになる。

手の関節は7つあると思うが、その内の手首と肘と肩と胸鎖関節は互いに独立し、十字に動くようにできている。この手を鍛えなければならないが、鍛える場合、ただ一本の長い手として鍛えるより、その各部位をバラバラに鍛える方がよい。

合気道の技も、それらの各部位がバラバラに鍛えられるようにできている。開祖も「合気道の技の形は体の節々をときほごすための準備です」と言われている。

例えば、手首を鍛えるのは「二教」(受身と取り)、肘は「三教」の受身、肩は「一教」の受身などがその典型的なものと言えよう。

手を鍛える場合、大体は手首、手首から肘の小手と肘、肘から肩の上腕と肩、肩から胸鎖関節にある肩甲骨と、体の末端から体の中心に向かって鍛えていくものである。これらの関節部は基本的に十字に動くようにつくられているので、縦横、または横縦と十字に力を加えて鍛えるべきだろう。

しかし、技をかける時は、これらの鍛えた体の部位をバラバラに遣っては力も出ないし、よい技にはならない。よい技を遣うためには、これらのバラバラな部位を連動して遣わなければならない。

バラバラに鍛えたものを連動して、一本の手として遣うためには、手を螺旋で遣わなければならない。螺旋がバラバラの各関節を結びつけ、つなげるキーということになろう。

また、技を掛ける時は、これらの部位は末端からではなく、中心から遣っていかなければならない。初心者は末端から先に動かし、体の部位を連動しないで、バラバラに動かす傾向がある。だから、技がうまく掛からないのである。

末端の力など、期待に反して小さいものである。少し力を加えて抑えられただけで、動けなくなってしまうものだ。体の中心にある腰腹の力を末端の手先に伝え、そして中心で操作して遣わなければならない。

鍛錬は体の部位をバラバラにして、末端から中心に向かって鍛えるが、技で遣うときは各部位を連動して、中心から末端に力を流し、末端ではなく中心で操作することが肝要である。