【第270回】 手足の連動

合気道は技の練磨を通して精進していくが、そのためには合気の体をつくっていかなければならない。本来は技の練磨をしながら、体をつくっていくのだが、無意識で稽古をしていっても、体は中々できないものである。体をつくるためには、つくる部位を意識して稽古していかなければならないし、場合によってはそのための特別メニューで鍛えなければならない。

五体がうまく機能しないで、どこかひとつでも上手く働かないと技にならない。その典型的な部位は、手と足であろう。手がうまく遣えなければ駄目だし、足もそうである。それゆえ、手と足がうまく働いてくれるようにしようとするのだが、人間のできることには限界がある。手と足の両方に意識を集中して稽古するのは、慣れないと難しいようなので、はじめは手か足かどちらかに意識を集中することである。

大体の稽古人は、まず手の遣い方の稽古から始まるだろう。足の遣い方に比べて、手の遣い方はそう難しいものではない。例えば、十字、螺旋、円、縦の円と横の円、円のめぐりあわせ、折れない手、足腰と結ぶ、末端の手から動かさない等などがある。

手の動きがある程度できるようになれば、足の動きに注意が向かうようになるだろう。ナンバ、撞木、足のあおり、脚のあおり、陰陽、重心移動、左右規則正しい歩行等などである。

手の遣い方がうまい人でも、足の遣い方がうまいとは限らないが、手の遣い方がまずい人は、必ず足の遣い方もまずいものだ。足の遣い方がより難しいということだろう。

この手と足の動きは、宇宙の法則に則った技をつかうための法則性がなくてはならない。どこで誰とやっても有効でなければならない真理の理合ということになろう。

この法則を合気道の技を通して見つけ、身につけていくのが技の稽古ということになる。その法則(技要素)を一つ一つ稽古していくしかない。初めは、手の遣い方に関する法則を見つけていくのだが、手の法則をある程度見つけると、今度は足に関する法則を見つけることができるようになるはずである。

しかしながら、法則に則った手の動き(技要素)や足の動き(技要素)をそれぞればらばらにやっても、うまい技は遣えない。手と足が連動しなければならないからである。

体の末端にある手と足を結びつけ、動かすのは、体の中心にある腰腹である。腰腹に手先と足先がしっかり結ばれていれば、手足を連動して遣えることになる。これを、末端の手や足から先に動かしてしまうと、手と足と体はバラバラに動いてしまう。

腰腹と手と足を結び、腰腹で手は手の技要素、足は足の技要素になるようにし、そして、その手足が連動して動くように稽古していかなければならない。もし、これをひとり稽古でやりたいなら、杖の素振りが最適であろう。