【第220回】 息遣い

技を掛けるにあたって、「息遣い」は大事である。「息遣い」は呼吸ともいい、これが上手く遣えなければ、動きも技も切れてしまい、力も出ないので、技をうまく遣えないことになる。

初心者は、自分の体の動きに合わせて息をするため、息が切れたり、ハアハアゼエゼエすることになる。上手な息遣いは、息に合わせて動くことである。ゆっくり動くときは、ゆっくりした息に合わせて動き、電光石火で動くときは、その息に合わせて動くのである。つまり、息を早くも超スローにも、浅くも深くも、遣えなければならないことになる。

そのためには、息に合わせて動く以前に、先ず息を出し入れする器官、肺や大隔膜などを鍛えなければならない。このための稽古を合気道では、主に受身を取ることによって鍛えているといえよう。どんな人の受身も息切れしないように取れるようになれば合格ということだろう。

呼吸器官ができたら、息に合わせて体を動かす稽古をする。慣れない内は、息を吸いながら動くようにするとよい。息を吸う(入れる)と体は柔軟になり、引力が増すが、息を吐くと固くなり、相手を弾いてしまう。
息の出し入れを間違えると、うまく動けなくなる。

従って、準備運動で体を柔軟にする場合、はじめは息を吸いながら(入れながら)伸ばさなければならない。吐きながらやれば体は固まってしまうことになる。(但し、慣れてくれば、息を吸っても吐いても体を柔軟にできるようになる)

次に、技を掛ける場合の息遣いであるが、大事なことは無駄のない息遣いということになろう。その息遣いは、開祖が言われている、日本古来の法である「いくむすび」(生産び)であろう。「いー」と吐いて相手に接し、「くー」と吸って相手をくっつけ、「むー」と吐いて相手を投げ又は抑え、「すー」と吸って相手から離れ、「びー」で息を整える。そして、また「いー」と吐いて相手に向かう。この「いくむすび」で体が動き、技を掛けられるようにしなければならない。

この「息遣い」を、6月にフランスのトゥールーズでやった合気道講習会で稽古したが、そのときにやった2時間の稽古プログラムをここに紹介する: