【第22回】 イニシエーション(加入儀式)

人の成長には段階がある。古来から日本には元服式があったし、現代でも七五三や成人式、結婚式があるように、人はそれまでの段階を捨てて新たな出発をしなければならない時期がある。それまでの自分のもっていた考えや価値観では通用しない新たな段階に入るわけである。

今はそういう儀式が軽んじられているが、その為に次の段階にふさわしい成長が出来なくなってきている。例えば、いつまでたっても大人になりきれない青年とか、結婚後も独身時代と同じように振舞う若夫婦などである。

このことは武道にもあてはまる。武道には昇段制度はあるものの、そうはっきりしたけじめはないが、稽古をしている間に自分が変わるという時期が必ずあるものである。その時にはこれまでの古いやり方を捨てて、新たにゼロからスタートしなければならない。

人はそれまでやってきたことを継続したほうが楽だし、それを変えたり捨てたりするのを不安に思うものである。大体はこれまでと正反対のことをやることになろうから、切り替えることによって本当にいい結果が得られるのかどうか不安もあるだろう。

武道の真の上達というのはy=axの延長上にあるのではなく、つまりx,y,z…と次元が変わっていくことである。これは、量の変化ではなく、質の変化といえる。 開祖が合気道から武産合気に軸足をうつされ、神楽舞や祈りに重点をおかれたのは、神の世界へのイニシエーションだったと言えるかもしれない。