【第213回】 失敗から学ぶ

合気道は、通常二人で組んで交互に技を掛けたり、受けを取ったりする相対稽古で技を磨いていくが、いつも自分のやる技が効いて、相手が倒れてくれるとは限らない。時として、相手に頑張られたり、逃げられてしまったりする。

初心者の内は、頑張られてもさらに力を込めたり、やり直ししたりして、何とか倒そうと頑張るのもよいが、上級者が初心者と同じように、やり直したり、ごり押しで倒そうとするのは考えものである。

初心者は、無理でも頑張ることによって、体力、気力がつくので、それも必要であるし、技がないのだから、それしか出来ないはずである。あとは、上級者がそれを受けて、導いてやらなければならないだけである。

しかし、相対稽古で相手のやりたいように受けをとってあげようと努めても、こちらの体にぶつかったり、引っかかったりして、受けがとれなくなることがある。典型的な例としては、四方投げでこちらの脇が締まるように進んできたり、四方投げで倒そうとばかり、こちらの手を下に落とすのだが、重心が掛かっている足側にある肩に力が集まるように落とそうとしたり、また、入り身投げでこちらと四つに組むような体勢になったり等など、こちらが受けを取れないように技をかけてくるのである。

受けがとれないと、相手はこちらが頑張って悪いとばかり、さらに力でごり押しをしてくるので、ますます受け身が取りにくくなる。これが、稽古での争いの典型的なパターンといえよう。

技を掛けて相手にぶつかったり、ひっかかったりして動きが止まったら、技としては失敗である。失敗しているのかどうかは、相手の反応で分かるものだ。相手が満足していなければ、掛けた技は失敗である。

失敗には原因がある。失敗に原因があれば、その解決策がある。解決策があるのだから、それを見つけて会得しなければならない。力ずくやごり押しで解決するのではなく、正当に、つまり、合気の道に則った解決をすべきである。

その解決策とは、技である。技の技であり、技要因ということが出来るだろう。この技要因は、人間がコソクにつくるような人工的なものではなく、宇宙法則に則った自然なもので、誰もが容認するはずのものである。

宇宙法則であるから、一つの技で見つけた解決策である技要因は、すべての技で有効であることになる。例えば、四方投げのそれを一教でも、入り身投げでも、すべての技で遣っていけるはずである。

技の練磨でも、できるだけ失敗しないように稽古していかなければ進歩はないが、失敗を恐れることもない。新しいことに挑戦すれば失敗は避けられないだろう。失敗を恐れて、出来ることだけをやっていては先へ進めない。

ただし、失敗から学ぶことを心掛けなければならない。失敗しても、そのままにしておかず、その原因を探し、そしてその解決策を見つけるのである。解決策である技要因を身につけて行くことが、技の練磨であり、上達であり、合気道なのだと思う。