【第185回】 着地側で攻めても技は掛からない

人は目いっぱい力を込めないと、技が掛からないように思ったり、稽古をやった気がしないようだ。力むことで意識がはいり、肺や心臓にも負担がかかるので汗も出るし、息も上がり、疲れも出て、快感を得るのだろう。

とはいえ、力に頼る稽古をしていると、相手に頑張られて技が効かず、上手く行かない場合にも、もっと力を出せばよいとばかりにますます力んでやってしまうものだ。これでは、何度やっても上手くいかない。上手くいかないのは力の問題ではなく、技の問題であることに気が付かないでいるのである。技遣いが間違っているのでは、どんなに力んでもできるものではない。できるためには、技、もっと正確に言えば、技の技である技要因を身につけなければならないのである。

相対稽古でよく相手が受けを取らないので、四つになってぶつかり合って膠着しているのを目にする。これは大体において、受けが悪いのではなく、技を掛ける側に問題があるのである。一言で言えば、受けが取れないような技の掛け方をしているからである。

その相手が頑張る原因の典型的な例として、自分の重心が乗っている側で攻めていることにある。例えば、二教裏では、自分の前側の手と前足で攻めるから、相手は全然崩れず、手首が痛いだけなので頑張れるのである。

これは、自分の後足に重心を移動させればよい。そうすると、自分の肩とそれについている相手の前の手は浮き上がってくるので、そこを自分の前足に重心を移動しながら決めればよいのである。

また、三教でも相手に頑張られて小手が捻られないのを目にするが、これも捻ろうとしている小手を、相手に近い側の足に重心を掛けてやるから膠着するのである。足の重心を反対の外側の足に移動してやればよい。重心の移動をすると、相手の腕が自然に浮き上がってくるので、そこを決めればよい。

この他にもよく見かけるのは、「四方投げ」で相手に頑張られて相手の腕を落とせないでいる姿である。落そうとする相手の手の側の足に、自分の重心も相手の重心も落ちているので、支えをつくってやっていることになってしまう。これでは、力を入れればいれるほどその力が相手の足の上に乗り、ますます固定させることになる。これも、自分の着地側の手で攻めるからである。自分の足の重心を手と反対側の足に移動させねばならない。

相手の力を抜き、相手を崩すには、接している側と反対側の足に一度重心を移す必要がある。技を掛ける側も、受け身の側も重心が載っている足側は盤石となるが、反対側は浮き上がりやすいものだ。技は倒すのではない、倒れるようにしなければならない。