【第173回】 未来は作り上げていくもの

先日、ビジネス界で有名な堀場製作所の堀場雅夫最高顧問が、「未来は予測するものではない。自分で作り上げていくものである。」と言われていた。まさしくそうあらねばならないと思う。

ビジネス界だけでなく、経済学者や科学者や宗教家などは、未来を予測して、未来はこうなるだろうと言っている。しかし、今より快適な社会になるという人たちがいる半面、今より大変になるとか、人類は滅んでしまう等と予測する人たちもいる。とはいえ、これまで未来の予測が100%当たったことはないし、これからもないはずである。1999年に世界大戦争になるという予測がその数年前まではちょっと話題になった。今はだれも関心を持たないし、予測した人の反省もないようだ。

ビジネスの世界では、会社や従業員の生活に関係があるので、未来がどうなるかは重要であろう。興味本位の関心だけではすまされないはずだ。だから堀場雅夫最高顧問は、当たらない未来予測に頼らずに、自分たちで作り上げていった方が確実であるといいたいのだろう。

未来を作り上げようとしても、希望通りになる保証はないだろう。しかし、漠然と待つより、作る努力をした方が、実現の可能性は高いだろうし、また、もし実現しなくとも納得できるはずである。何故ならば、人間がもっとも後悔することは「やらなかったこと」「挑戦しなかったこと」であるはずだからである。

人は本来、未来を作りあげていくようにプログラムされているとも言えるのではないだろうか。合気道の教えでは、宇宙は何かに向かって進んでいるという。これを宇宙生成化育と教わっている。そして、人も何かの使命を帯びて、何かに向かって進んでいるというのである。

合気道にも使命がある。従って合気道家同士にも使命があるはずである。つまりは、宇宙生成化育のお手伝いをする合気道、あるいは自分の合気道が、どうなるかではなく、どうあるべきなのかを考えて、練磨修行しなければならない、ということではないだろうか。例えば、今の物質やパワー重視の魄の世界から、心を重視する魂の世界に少しでも近づく未来を作るためのお手伝いをしていく、ということ等である。

宇宙が目指している先を見つめ、それを目標に生き、そして稽古をしていくことが、未来を作り上げていくことになるのではないだろうか。宇宙生成化育、宇宙の法則に背いていれば、未来はないはずであり、未来を作り上げることは出来ない。未来を作り上げていくために、稽古に励みたいものである。