【第169回】 足は真っ直ぐ、手は円く

合気道は武道であるから、技遣いの動きは最速になるようにするためには、足は最短距離を進まなければならないし、また最大の力が出せるような手や体の遣い方をしなければならない。

最短距離は直線であるので、直線を進むことになる。足は真っすぐ進まなければならない。合気道は円の動きであると言われたりするが、足に関しては違うようだ。足は真っ直ぐ進んで相手の死角に入身しなければならない。

真っすぐ進むためには、気の体当たりと体の体当たりをしなければならない。これがないと、相手を回ってしまったり、相手から逃げてしまい、最短距離を進めないことになる。入身したら、三角法で足を進めていくが、所謂「ナンバ」の体の遣い方、重心の移動、それに呼吸も重要である。

手は最大の力が遣えるように、動かさなければならない。腰の力が手先まで伝わり、その力が相手に伝播し、その力を相手と結んだまま、最後まで切れずに収めなければならない。そのために、手は足と違い直線で遣うことはできない。手を直線で遣うと、力が入らないし、相手の手との結びを切ってしまい、相手と離れてしまうので、技はかからない。手は円く遣わなければならない。

手を円く遣うには、手を二種類の円で遣わなければならないようだ。一つは、手首から肘、肩、胸鎖関節までの手が一本の棒のようになり、手の平が上を向いたり下を向いたりと、円く回ることである。

もう一つは、手先を手の関節や腰を支点に、円く遣うことである。ここで支点になるのは、手首、肘、肩、胸鎖関節と腰である。これらの関節を支点に、円く手を遣うのである。従って、沢山の円が出来るはずである。

相半身の小手回し(二教裏)などの手首を支点とした小さな円から、腰を支点とした四方投げなどの大きな円など、いろいろな円がある。手首でも肘でも、肩や胸鎖関節を支点にした円が遣えるようにしなければならない。合気道の技は、意識すればその部位の鍛錬ができるようにつくられているのだから、意識して稽古をすればいい。

合気道の技は、この二種類の円の組み合わせで掛けないと、上手く掛からない。どちらかが欠けても、技は上手くできない。円の中の円であり、その円と円とは十字になる円とも言えよう。

「足は真っ直ぐ進め、手は円く使う」は故有川師範の言葉である。(2003年1月29日)