【第126回】 止まらない

合気道は技の形を、通常二人で組んで、受けと取りを交代しながら繰り返し稽古する相対稽古法である。実力も然ることながら、初心者のうちは、技が上手くできるかどうかは相手にも大きく左右される。相手が弱かったり、受けを素直に取ってくれるのなら別だが、大きい相手、腕力のある相手だと、目の前に立たれただけで力んだり、息が上がってしまったりしてしまう。そういう相手に腕など取られると、相手が頑張っているわけではないのに動けなくなって、ますます技が掛からない。

技が上手く掛かるためには、いろいろな条件をクリアしなければならない。その一つに、「止まらない」「止めない」ということがある。何を止めてはいけないのかというと、先ずは手足、腹、腰、肩などの身体と身体の部位の動きを止めないことである。特に足は止まり勝ちで、足が止まることを「居着く」といって、武道では忌み嫌われる。昔だったら、居ついたら切られたということだろう。足だけではなく、手や腰や肩など体の各部を止めてはならない。特に、使っていない陰の部位の動きが止まりがちになるので注意しなければならない。陰が止まってしまえば陽に変わることが出来ず、技は決まらないことになる。

二つ目は、息を止めないことである。息が止まると、たいがい動きが止まるもので、力がもどって思うような働きができないものだ。息が止まるのは、肺や心臓が弱いこともあるが、息の遣い方、つまり呼吸の仕方がまずい事に原因がある場合が多い。受身をどんどん取って肺と心臓を丈夫に大きくするのが第一だが、技をかけるとき吸息と吐息を意識してやることである。初めは、相手に触れるまでは吐息、そこから相手を投げたり、抑えるまでの間は吸息、投げたり抑える瞬間からは吐息というように、息を遣う稽古をすればよい。

この息遣いの稽古を力一杯やっても、息が止まらないよう、切れないよう、だんだんとゆっくりできるようにやるようにやるとよい。不思議なことに、ゆっくりできればできるほど、速くもできるものである。それができれば、後は息が自由に遣えるようになって、体は息に従って動くようになるはずである。

三つ目は、「気」を止めないことである。「気」を居着かせないことである。「気」というのが難しければ、「気持ち」「こころ」と考えてもいいだろう。「気」は技の形を導く先導者ということが出来る。「気」が止まれば、体はどう動いていいかわからなくなり、動きが止まるか、メチャメチャに動くことになる。開祖も、「手足腰の心よりの一致は、心身に最も大切である」(合気道新聞 No.75)と、「気」「こころ」と体を一緒に動かさなければならないことをいっている。また、合気道は技の気形の稽古ともいわれるように、「気」で技の形を描き、その軌跡が止まることなく、切れることのないように、美しく無駄のない渦の流れにしていかなければならない。

この「身体」「息」「気」の三つが止まらないで動けるようになれば、一段と更なる上達ができ、多少腕力や体力のある相手にも技がかかるようになるだろう。勿論、技がどれだけ上手くかかるかは、どれだけ「身体」「息」「気」の三つが止まらずに、そして連動して動くことができるかに掛かっている。もっと上手くなりたければ、それを更に稽古するだけである。