【第2回】 やり方が逆さま

技がうまく掛からない最大の理由は、多くの場合手や足の使い方を逆に使っているからである。

例えば、天地投げでほとんどの人が天の側の手を上げようする。力が無い相手であったり、演武会のように受けを取ってくれる場合はうまくいくが、しっかりと押さえられると物理的に考えても上げることは難しい。地の手を下げることによって、天の手は上がるようになるのである。上げるためには下げなければならない。上げるために上げるのでは争いになるだけである。

その他にも多くの人がやっている逆の例を挙げると、(1)二教の裏の手さばき(2)小手返しの相手の小手を返す手(3)入身投げで相手を倒す手、などがあるが、坐礼、ストレッチ(例:手首、関節運動、開脚)等でも息の使い方も逆になっている。手足の使い方も逆で、所謂、西洋歩きになっている。体の表を使わなければならないのが裏でやっている。多くの人はどっちが体の裏か表かも分かっていないし、気にもしていない。

技の稽古や鍛錬は順でやらなければならない。順とは自然であること。自然に対しては、人は無意識に感応する。逆になっている不自然な力や技は、相手に反発を起こさせるものである。
逆でやるのでは、いくら稽古を続けても上手くならないばかりか、やればやるほど悪くなるであろう。

【注】
(1) 二教で相手を押さえている方の手で相手の関節を決めようと、相手の方に押し込んでいるのでは力のある人にはなかなか効かない。二教は逆に相手の手首を自分の肩や胸に引き込んで密着させ、引き込んだ力と肩や胸の密着部から出る力がちょうどゼロになるようにすると決めやすい。この陰陽がゼロになった力が、手さばきなどとは比較にならない強力な破壊力と粘力を出す。

(2) 小手返しをするとき、大体の人は相手の手を掴んでいる反対の手で押し付けてくる。小手返しで相手の小手を返すには、相手の手を押さえている自分の親指に力を集中して、こちらの手をメインに使わなければ効かない。片手でも出来るように稽古する必要がある。また、小手がどこなのか分からないのでは、小手返しではなく、手首捻りになってしまう。小手を返すとき、相手の手首、小手、肘を直角になるようにし、テコの応用を使えばあまり力はいらない。手の返しは「縄をなうように」といわれる。

(3) どうしてもはじめに出した手で倒そうとしてしまう。手は左右交互に陰陽で使わなければならない。特に、最後に相手を倒すときは相手の襟に掛けている手がメインであって、顎に掛ける手ではない。また、襟にかかる手が離れていたり、弱かったり、そして、顎にかかる手を横に使うと相手に背負われてしまう。