【第1回】 なぜうまくいかないか

有段者の人でも、何年も稽古をしているのに、技がうまく利かず相手を制することがなかなかできない。それだけでなく以前と比べてあまり変わってもいないし、進歩がない。こんなに稽古をやっているのに何故うまくいかないのか、と考えてしまう人も多いようである。

多くの人は、稽古をやればそれだけ上達し、相手もうまく制することができるようになると考えている。初心者の段階では確かにその通りだが、高段者の段階ではそうとはかぎらない。つまり、上達するように稽古・修行をしなければ上達はない。
上達するにはいろいろなことがあるだろうが、まず「稽古をやればそれだけうまくなる」という錯覚を取り除くことである。もちろん、稽古をしなければうまくならないが、これは必要条件であって十分条件ではない。

次に、目標をもって稽古すること。稽古の目標には大きいもの、小さいもの、遠い先のもの、間近のものなど人により時により違うだろう。大は自分は合気道をやることで何を求めているのかとか、小は呼吸力をつける、などがある。例えば、この呼吸力をつけるということでも、呼吸力というものが分かっていなければ、目指す目標が見えないことになり、いくらやっても稽古は無駄になることになる。

また、技をうまく使うにはいくつかの、いや無限の原理原則があり、、それを一つ一つ見つけ出していかなければならない。例えば、手足を陰陽にそして交互に使う、体を捻じらず平面に使う、体の表を使う、技は相手を崩してからかける等などはほんの一部であるが、この一つがうまくできなくても技はうまくきまらない。それでも相手を倒せるとしても、相手はおそらく満足して倒れたのではないのではないかと思う。

先ずは目標を持ち、目標に通じる道をあせらず、根気よく一歩一歩進むことである。その蓄積が1年、10年で少しずつ形になってくるはずである。