【第72回】 重心の移動

合気道の稽古で相手を投げたり押さえたりする上で重要なのは、重心の移動である。つまり重心の移動で相手を崩すのである。重心はどこに置くかというと、足の裏の踵(きびす)である。ただし踵をちょこんと出しても重心にならないので、踵に全体重がかかるようにしなければならない。そのためには脊柱を垂直にし、体を捻らず、腹の力が踵にのるようにしなければならない。腹の力を踵にのせるのは容易ではない。たいていは腹の力も体重も両脚の間に落ちてしまうであろう。これは股関節が硬いからである。

重心が踵に落ちれば、あとは踵を左右交互にシュモクで使えばいい。重心が片方の踵にかかったときは、その片方の足で全体重を支えることになる。それ故、他方の足が自由に動けることになる。

この重心の移動がスムーズに行われるためには、上記以外にもいろいろ条件がある。例えば、足(踵)と腹をむすぶ。足と腹がむすぶと、踵が着地するとき、腹で感じるし、また腹で足の調子をとることができるようになる。また、身体の表(背中、腰側)に力を通し、踵に体重をかけなければならない。身体の裏を使うと、膝とつま先に力が集まり、力が出ないばかりでなく、膝などを痛めることにもなる。

合気道の形稽古は、重心の移動がスムーズにできるようにも構成されているが、それがなかなか上手くいかない場合は、次のような稽古を通してそのための体をつくるのがいいだろう。

<股関節を柔軟にするために>
〇 相撲の基本稽古の四股、すり足
〇 股割り

<重心移動>
〇 歩く、階段、坂・山のぼり:踵に体重がのるように意識して歩く。腹で歩く。腹に踵が感じない場合は、階段、坂、山を歩くと感じやすい。
〇 胸取り二教:重心の移動で技を使う。重心の移動がなければ技は効かない。
〇 後両手取り:表の力を重心の移動で最大限に使える最良の形である
〇 呼吸投げ:手でなげるのではなく、重心の移動で投げる