【第70回】 体さばき(1) 転換

合気道で相手の攻撃を捌いたり、それに技をかけるための動きを、体さばきという。合気道の基本的な動き、体さばきは、「入身」と「転換」である。

転換とは、体(たい)の変更ともいわれ、相手が攻撃して、相手の気や体が自分のそれにぶつかったところで体と気持ちを転換し、相手と同じ方向を向くことである。「転換」は合気道の基本の動きなので、この「転換」ができないと技が効かないどころか、合気道にならないことになる。また、「転換」が出来ないと、その対照的な動きである「入身」もその程度にしかできないことになる。「入身」と「転換」は、お互いに表と裏の陰陽の相関関係にあるといえよう。

この「転換」は、一見容易に見えるので、たいていの初心者は何の疑問も持たず、もう出来ているつもりでやっているが、多くは「転換」になっていないで、相手と四つに組み、気も体もぶつかってしまっている。「転換」した場合は、顔と腹(へそ)と膝と手が相手と同じ方向を向いていなければならない。もっと大切なことは、「気」も相手の気の流れと同じ方向に流れていなければならないことである。よほど注意して稽古を積まないと、自分の「気」が相手の掴んでいる手に捉われてしまったり、体も顔もそこに居つくことになる。

「転換」ができる体づくりをする形(かた)や練習法として最適なものには、次のようなものがある。

〇 (単独)転換運動:逆半身で手を前に出し転換する。
〇 (単独)入身転換運動:逆半身から後足を一歩進めて転換する。手は足と同じ側を出して陰陽で使う
〇 片手取り転換法(相対動作):逆半身で手首を持たせたところから転換運動
〇 正面打ち入身投げ
〇 突き入り身投げ
〇 剣、杖の素振り。切りかえし。

「転換」のポイントは、まず「気」、そして腹、足、手と転換することである。
初心者は、この逆の順序で転換するので上手くいかないのである。
まずは腹、足、手が「転換」しているかどうか、強く意識して、ゆっくりと正確に稽古することだろう。正確でない「転換」をいくら稽古し続けても上達はしない。