【第667回】 手と足の節々を鍛える その2

前回は、しっかりした手をつくるために、手の節々を鍛えることを書いた。
節々を鍛えるのは手だけではない。手同様にしっかりした足も節々を鍛えなければならない。足の節々とは、指、足首、膝、股関節である。足の指が動くための支点は母指球と小指球である。

阿吽の呼吸の阿で息を引く際は、足先の指は母指球と小指球を支点として爪先の前方と踵・くるぶしの後方に体重が流れる。この双方に流れ合う力によってしっかりした足底がつくられる。
そしてこの前方と後方への相反する流れ合いが、足首、膝、股関節でも同時に行われ、各関節と関節間が強靭になると感得する。息を引くのは「火」であると云われるが、まさしく足が火で燃え上がっている感じになる。

手と同じように、股関節を支点に気と力を足先方向とその反対方向に出すと、その気と力は下腹に結ぶ。そうすると腹に集まった気と力は股関節、膝、足首の先に逆流し、足に気と力が集まることになる。
これで手先からの気と力と足先からの気と力が腹に集まり、腹から手先と足先に出ていくことになる。これでしっかりした手と足がつくられ、腹と連動してつかうことができるようになるわけである。

息を引いたら、今度は息を吐いて腹から足先に力と気や体重を流すのだが、吐く息は、引く息の「火」に対して「水」なので、水が地に染み込んでいくように、己の体や相手を収めていかなければならないことになる。道場の相対稽古で技を掛けて、最後の収めで相手を投げたり抑える際、相手とぶつかったり、弾かれてしまうのは、吐く息を「火」としているからだと思う。「水」の息づかい、体や技づかいを研究しなければならないだろう。

この引く息での「火」で足の指先に力が入り、爪先方向と踵方向に足底は広がり、爪先で地をしっかり抑え、その逆方向の踵、そして膝、股関節に力が働いて足がしっかりし、腹と結ぶわけだが、これが十分に出来ないと、しっかりした足が出来ない以前に、足に力が入らずに、立つことも歩くことも難しくなってくる。
尚、高齢者がしっかり歩けないのを観察してみると、この各関節、特に、足先に十分力が入っていないことと、この支点となる関節である母指球がつかえない事と母指球を支点として前後への力を分散してつかえないことであるようだ。これが出来ない根本的な理由は、息づかいであると考える。阿吽の呼吸ができない事、阿吽の呼吸で歩かない事だと見る。阿で息を引いて足(足底、爪先)をしっかり地につけ、足の節々に気と力を満たし、そして吽で息を吐きながら、体重を足に落していくのである。
年を取って歩けなくならないよう、合気道の稽古で足と手を鍛えておくのがいいだろう。