【第64回】 陰陽で動く体をつくる

世の中のものはすべて陰陽、裏表でできている。片方だけしかないということは決してない。合気道の形(かた)には裏表がある。形の稽古も表と裏の両方を合わせてやる。

合気道では、「陽」とは表にあらわれる仕事をするところ、「陰」は仕事をしていない隠れたところといえるだろう。しかし、「陽」はいつまでも「陽」ではなく、「陰」にかわって、また「陽」となるというように、「陽」と「陰」は交互に変わる。「陽」満ちて「陰」となり、「陰」満ちて「陽」に変わるのである。

初心者はどうしても「陽」だけで仕事をしよう、技をかけようとしてしまう。その結果、相手とぶつかってしまって、上手くできない。基本の形だが多くの人が何年、何十年やってもなかなか出来ないものがある。その典型的な例には、あとで述べるが一教裏、天地投げなどがある。

合気道の稽古は、この陰陽、「陽」から「陰」、「陰」から「陽」・・・と手足を連動(ナンバ)し、変更しながらやらなければならない。本来は、すべての合気道の形と技はこの陰陽でやらなければならないが、なかなか体がそのようには動かない。であるから、まず陰陽で動く体をつくらなければならない。陰陽で動く体は合気道を稽古して行けば自然につくられるはずであるが、実際には難しく、特別に意識した稽古が必要なようだ。

陰陽で動くことは、どんな形で技をかける場合でも必要不可欠なので、すべての形で注意して稽古すればいいのだが、陰陽で動くことが大切であることが分かり易い形(かた)を稽古するのがいいだろう。つまり陰陽で動かないと上手く技が決まり難い形である。これらの形を通して陰陽で動く体をつくるのがいいだろう。例えば、

〇 正面打ち一教裏
〇 正面打ち入身投げ
〇 天地投げ
〇 三教

上記の形は、陰陽で動かないと技はきまらないはずである。これらの形で技が決まるようになれば、これができたといえるだろう。はじめから陰陽でとどこうり無く動くのは難しいだろうから、まず陽ではじめに出した手と足の反対側の陰の手足を、次に陽に使ってみることである。また、相手とぶつかって動けなくなったり、詰まってしまった場合は、即反対側の陰を陽に代えて使ってみるとよい。