【第607回】 人差し指の不思議な働き

長年にわたる力に頼った稽古に飽きてきたのか、年のせいなのか、力の稽古に満足できなくなり、そろそろ稽古のやり方、技づかいを変えなければならないと思って奮闘している。
これまでの稽古で培った力を土台にした上で、その力に頼らない技づかいをするということである。

そのために坐技呼吸法と諸手取・片手取り呼吸法を機会があればやっている。
お陰でこの目的のためにいろいろな発見があったし、力に頼らない稽古の世界への入り口を見つけたかもしれないと思っている。

その一つは、人差し指である。人差し指は技づかいにおいて非常に重要な役割をし、不思議な働きをするようである。
坐技呼吸法で、人差し指を上手くつかうと相手は浮き上がってくるし、諸手取呼吸法でも、これまでの力ではない力で倒すことができるようになる。もう少し詳しくは後述する。

それでは人差し指をどのように遣うのかというと、坐技呼吸法の場合、【1】息を出しながら、力まずに気持ちを人差し指と共に他の指の指先に通す 【2】人差し指を支点(体)とし動かさずに息を入れると指に気が満ち、そして腕(肘)が地に落ちていく【3】更に息を入れ、人差し指を中心に5本の指を開いていくと体に気が満ち【4】相手が浮き上がってくる

人差し指の働きと効力をもう少し述べると、

  1. 人差し指と腰腹がどこにも邪魔されずにつながること。因みに、他の指ではどこかに引っかかって腰腹と繋がり難いものである。
  2. 人差し指を意識して息を入れると、手はその手の重量で自然と地に落ちる。通常は、力んで落とすことになるので、相手とぶつかってしまうのである。
  3. 人差し指を意識して、己の手が自然に・無作為に下がると、相手の手と気(気持ち)が自然に・無作為に上がってくる。これが不思議のひとつである。
  4. この上がってくる気に従って手を動かすと相手の抵抗なく収めることができる。
    これが魄を土台にし、魂が表になって魄を誘導する感覚になり、力に頼らない技づかいであると覚える。
この人差し指が重要であるというのは、開祖の手の姿を見ればいい。写真を幾つか掲載するが、開祖の人差し指は気に満ち、気の進む方向や相手を投げる方向、また、気を収める方向を示している。
かって、開祖は指一本で投げる事、抑えることはできると言われていたし、実際にやられていた。また、かって本部で教えておられた藤平光一先生も、よく人差し指を掴ませて、気が出ていれば折れ曲がることもないし、投げることもできるといって、我々に見せてくれた。
人差し指には不思議な力と働きがあるということである。

しかし、技は人差し指だけで掛けるものではなく、五本の指の手で掛けるので、人差し指が上手く働けるような手のつかい方をしなければならないことになる。