【第596回】 手の節々を鍛える
手は幾つかの節、関節でできているが、その内、合気道の稽古で関係する主な節は、手首、肘、肩、胸鎖関節であろう。技をつかうにあたって、手首から胸鎖関節までの手を一本につかうことが大事であるが、これらの節々をつかうことも大事なのである。
はじめの内は、技を大きく、力いっぱいかけるので、手を一本にし、腰腹の力を手先に集めて腰腹で技をつかえばいいが、繊細な技をつかうようになると、この一本の手を節々でつかわなければならなくなる。例えば、相手との間合いが近い場合、胸鎖関節や肩を支点とする円の動きはできないので、肘や手首を支点とした円の動きでやらなければならない。また。正面打ち一教で打ってくる相手を弾き飛ばさず、くっ付けてしまうためには、手首を支点として手先だけを返さなければならない。
手首、肘、肩、胸鎖関節の節々を上手くつかえるように、これらの節々を各々意識して鍛えなければならない。
通常の相対での基本の形稽古で、その節を意識して鍛えようと思えば鍛えることができるはずであるし、これが節々を鍛える基本的な稽古であろう。
更に鍛えようと思えば、次のような鍛え方があるだろう。
- 素手での素振り:手を剣のように振る。
<正面打ちで切り下す>
@胸鎖関節を支点として一番長い手で振る
A肩を支点として、肩から手先までを剣として振る
B肘を支点として、肘から手先までを剣として振る
C手首を支点として、手首から手先までを剣として振る
これを左右繰り返す。
<米の字(米)に振る>
@切り下して切り上げる
A手先を顔の左に持ってきて、右下に袈裟に切り、そこから左上に切り上げる
B手先を顔の右に持ってきて、左下に袈裟に切り、そこから右上に切り上げる
C手先を胴の高さまで下ろして、右から左に胴切り、そして左に胴切り
D手先を腹の前に持ってきて正面を突く
これを左右繰り返す。
- 短刀、短い木刀を片手で、上記の素手と同じように振る
- 木刀を両手をつかって、上記の素手と同じように振る
- 杖・槍:手首、肘、肩、胸鎖関節の節々を意識してつかって突く
この節々の部分的な鍛錬によって、手は一層一本の手として、また、部分々々でつかえるようになるし、弾かずに引っ付く引力の強い手、また、腰腹からの力が集まる強い手となるはずである。
手首、肘、肩、胸鎖関節の節々を鍛えるポイントは、支点となる節は動かさず、その節より先は剣のように折れ曲がらないことである。例えば、肘の場合は、肘が支点になるから肘をむやみに動かさないで、肘から先に気と力を入れて剣のようにつかうのである。
その意味で、末端の手首を節としてつかうのは中々難しいものであるので、一層の鍛練が必要になる。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
▲