【第578回】 相手を浮き上がらせる体のつかい方

「合気道の思想と技」の第578回「合気道は魄力ではないとは」で「息と心体を天の運化に合わせてつかえば、大きさ重さに関係なく、どんな相手も浮き上がらせることができる」ということを書いた。
そこでここでは、相手を浮きあがらせ、無重力化するためにはどのように体や息を使えばいいのかを研究してみたいと思う。

そのためには、前回引用した『合気神髄』にある開祖の次の教えを熟考し、それに従って体を使えばいいと考える。
「合気はまず十字に結んで天ていから地てい息陰陽水火の結びで、己れの息を合わせて結んで、魄と魂の岩戸開きをしなければならない。魄は物の霊を魄という宇宙組織のタマのひびきが魂である。宇宙を動かす力を持っていなければいけない。天の運化が、すべての組織を浮きあがらせ、魄と魂の二つの岩戸開きをする。これをしなくてはいけない」。

この教えを基に、体のつかい方を具体的に説明してみる。
まず、「十字に結んで天ていから地てい息陰陽水火の結びで、己れの息を合わせて結んで、魄と魂の岩戸開きをしなければならない」とあるが、要は天の浮橋に立つことである。相手と接したところで相手と結び一体化するのである。この状態で相手は引力でくっついて離れなくなり、こちらの心体の一部になってしまうので、相手は無重力化したことになる。

次に十字である。体を十字、十字に返すところで相手は無重力となるのである。相手が掴む手先を十字に返しただけでも、入身投げや呼吸法や四方投げ等で腰を十字に返しても、相手は浮き上がり、無重力状態になる。十字に返すことで円ができ、相手はその円を遠心力と求心力で、無重力の状態で回るのである。

更に体を天と地の息に己の息(イクムスビ、阿吽)を合わせて技を掛けると、相手は浮き上がってくる。これは入身投げや呼吸法や天地投げ等でやり易いだろう。
これが、「天の運化が、すべての組織を浮きあがらせる」ということと考える。

相手を浮き上がらせるためには、体を陰陽、十字に、息に合わせてつかわなければならないことになる。
また、それができるには、ある程度の体をつくる、魄の養成も必要である。