【第574回】 鉄棒のような足に

手と同様に、足もふにゃふにゃでは十分な力が出ず、技も効かない。足も鉄棒のようにならなければならない。しかし、手もそうであるが、足は手より更に鉄棒のように堅固に成り難いようである。
鉄棒のように堅固になるという意味は、足が気と力でみなぎり、張り切り、体をしっかりと支えると共に、地からのエネルギーを、足を通して手先まで通すということである。
四方投げでも、二教裏の決めでも、この堅固な足をつかわなければ決まり難いはずである。

鉄棒のような足(下腿)にするのは、やはり息づかいが大事である。イクムスビの息づかいに合わせて鉄棒のような足をつくるのである。イーと息をちょっと吐いて足を地に着け、クーで息を入れると体重は地の下に降りと同時に、地からその抗力が上がってくるのである。上下二つの力が足に働き、足にも上下の力がみなぎり、堅固な足ができる。更にムーで息を吐くと、この堅固な足に全体重が掛かるので、更に足は堅固になる。
片手取り呼吸法や諸手取呼吸法でこの感覚は掴みやすいだろう。そしてこの呼吸法を稽古することによって、鉄棒のような足をつくっていけばいいだろう。

正面打ちの一刀両断の素振りをやるとわかるが、切り下す前に爪先だった足がふらついてしまうものである。足がまだふにゃふにゃしているのである。足を鉄棒になるようにつかわなければならない。そのためには、繊細な体づかい、足づかいが必要である。地に着けた足の足底の三点(踵、小指球、母指球)を息を入れながら、踵→小指球→母指球と重心を移動すると、母指球のところで鉄棒の足が出来るのである。
正面打ちの一刀両断の素振りは、はじめの内は容易ではないだろう。手を上まで振り上げると足がふらつくはずである。母指球に十分体重がのらず、足が十分堅固にならないからである。

従って、母指球のところで鉄棒の足が出来る感覚が掴みづらいだろうから、この感覚を掴みやすい横面打ちの一刀両断の素振りをやるといい。母指球での足の感覚が掴みやすいことと、重心が足の足底の三点を踵→小指球→母指球と移動する感覚が掴みやすいのである。

また、この要領で四股を踏むといい。時間や体力に余裕があれば、毎日、50回ぐらい踏むといいだろう。

技の動きの中で足を鉄棒のようにつくっていかなければならないが、立ったまま、外を歩きながらでも鉄棒の足をつくることができるし、つくらなければならないだろう。
まず足底の三点で立ち、その三点を重心が踵→小指球→母指球と移動するように立ち、または歩く。母指球で息を最大に入れると指が開くと同時に足が気と力で満ち、堅固になる。手を鉄棒のようにする時、手の指先を息を入れながら開くのと同じである。

足を鉄棒のようにつくっていくのは、はじめからは難しいだろうが、形稽古で鉄棒の足を意識して技をつかい、道を歩く時、電車で立っている時もこの稽古をしていけばいいだろう。

鉄棒のような手と鉄棒のような足ができれば鬼に金棒だろう。