【第55回】 手刀

合気道の取り(攻撃法)には、手や肩など相手の体の部位を掴むもののほかに、手刀で正面や横面を打ち込むものがある。手刀の形には流派によりいろいろあるが、合気道では指をすべて開いて、小指の下の部分(小指外転筋)を使う。手刀は通常「しゅとう」というが、本来は「てがたな」といったようだ。元々は刀による動きを素手で行なったのが始まりであろう。

攻撃する相手の取りの手刀をさばいたり、技をかけるには、しっかりした手刀を備えた手、腕が大事である。つまり、手刀は攻撃する側にとっても、それを受ける側にとっても、大事なことである。取りで手刀で打つ場合、しっかりした手で気を入れて打たなければ、本当の稽古にならないだろうし、みっともない。

手刀は刀として使うわけだから、手刀の稽古法は刀法を基本とするのがいい。 故有川師範は、八つの打ち・切りと突きの九つの動きの手刀稽古法をされていた。

(1) 手刀を頭上に上げ、中心線を振り下ろす (写真 1.)
(2) 振り下ろした手を、手を返さずに頭上まで上げる
(3) その手をそのまま左に移し (写真 2.)、右斜め下に切り下ろす
(4) 下ろしたところで、手の平を返し、斜め左上に切り上げる
(5) 上げた手を、手の平を返して、右側に移動し、左下に切り下ろす
(6) 切り下ろした手を返して、右斜め上に切り上げる
(7) 右に上がった手を、そのまま真横まで下げ、手を返しながら左に真横に切る
(8) 手を返して、右に真横に切る
(9) 手刀を体の中心にもどし、突く (写真 3.) この稽古法の手刀の軌跡は、"米"である。この稽古をすると、手刀がしっかりするだけでなく、肩が抜けて、手や腕が自由に動くようになってくる。ただ、注意しなければならないのは、手先で打たずに、肩で打つようにすることである。手刀が自由に使えなければ、技は効かないし、手刀を使う応用技に進めない。合気道の手刀も奥が深いものがありそうだ。