【第530回】 足づかいは大事であるが難しい

合気道の技は、足で掛けるといっていいほど、足づかいは大事である。
しかし、足づかいは容易ではないだろう。何故ならば、合気道の足づかいは、一般的な日常のつかい方と違うからである。
まず、手や足で技を掛ける場合は、所謂、ナンバと云われる、手と足の同じ側が共に地に落ちるように歩を進めるのである。右手と右足、左手と左足が右と左に一緒に、交互に動くのである。相撲力士の歩の進め方はその典型であるし、また、誰でも山を登り下りするときや階段を上がり降りする際は、このナンバになるはずである。ナンバでないと力が出ないし、安定して体重を運ぶことが難しいのである。

次に、足づかいの難しさは、法則に則った足づかいをしなければならない事である。例えば、右足、左足を陰陽に規則正しくつかわなければならないはずである。
何故かと云うと、技が上手くつかえた場合は、足が右・左に規則正しく陰陽でつかわれているし、逆に、技の動きが切れたり、相手とぶつかったり、相手に頑張られたりする場合は、その法則違反をしたことによるからである。

また、足も手と同様、十字につかわなければならないという法則である。撞木、六方で歩を進めることであり、腰腹の面と足先が十字になるということでもある。

三つ目は、息づかい、呼吸によって足はつかわれなければならないことである。
合気道の息づかいの基本は、イクムスビである。このイクムスビで足をつかうのである。足を速く遅く動かしたり、大きく小さく動かしたりと調整するのは、この息づかいである。
従って、イクムスビの息づかいができなければ、足を上手くつかうことはできないということになるだろう。

もう一つ根本的な難しさがある。それは稽古によって、膝を痛めてしまうことである。稽古人の多くは、何年か稽古を続けていくうちに、膝を痛め、サポーターをして稽古をするようになる。100人中一人二人なら、この膝を痛めることは個人の問題といえるだろうが、半分以上も痛めるということは、何か根本的な問題があるはずである。

その原因はやはり法則違反の足づかいをしていることになると云える。それは体の表をつかわずに、体の裏をつかって技を掛けているからである。
体の表とは背中や腰、そして太もも、もも、アキレス腱、踵などのある背面であり、体の裏は、胸、腹、膝などのある前面である。

技を掛ける際に力むと、前面に力が集まり、前足に体重をかけてしまい、そして膝に己の体重と相手の力がのしかかってしまうので、膝に負担が掛かるのである。その負担に耐えなくなれば、膝は悲鳴を上げ、痛みを起こすことになるわけである。その典型的な例は、二教裏である。体の裏(前面)をつかっているから、技は効かないし、膝を痛めるのである。

体の表(背面)から力を出すようにしなければならないが、これが難しいようで、注意をしても、体の裏(前面)から力を出してしまう。これは人の防衛本能とかの本能的なもののようなので、この本能に打ち勝つのは容易ではないのだろう。

しかし、どんなに難しくとも、足づかいは大事であるのだから、これらの問題を解決しなければならない。そうしないと、次のステップに進むことができない。