【第500回】 足も大事

合気道で上達するためには技を練っていかなければならないが、体をつかい方が大事である、とこれまで書いてきた。だが、これまでは主に体の上部、特に手に関するものであった。

つまり、手は腰腹と結び、腰腹でつかわなければならない、とか、左右陰陽でつかう、十字でつかう、円の動きでつかわなければならない、等々である。

手のつかい方は、それほど難しくはないだろう。真剣に稽古すれば、身につくはずである。手と頭はつながっているといわれているように、頭で思ったように手を動かすことができるし、見ればわかる。ただ、手は自由に動くので、自分のやりやすいようにつかってしまう。それで、法則から外れてしまいがちになるのが欠点である。

足のつかい方は、手と違って難しいだろう。頭で考えたようには、なかなか動いてくれないのである。足は頭とは直接つながっていないからである。だが、技は手でかけるというが、実際は足でかけるといえるほど、足づかいは大事なのである。なぜならば、体重を技にするようにならなければ、よい技にはならないからである。体重をつかうためには、足のつかい方が大事になる。

手と同様、足のつかい方にも法則がある。まず基本は、右、左の足を、右、左、右・・・と規則的に陰陽につかうことである。さらに、同じ側の手と足が規則的に、陰陽でつかわれなければならない。この法則が破られれば、技にならないし、体を壊すことにもなりかねない。従って、これは法則なのであり、以前にも書いたことである。また、足を十字に、足裏をあおるようにつかわなければならない、ということも書いた。

今回は、さらなる足のつかい方を研究してみることにする。研究するとは、それまでの稽古を通して得た技や足のつかい方をまとめ、それを法則化し、その法則で体をつかって技をかけて、法則が正しいかどうか検証したり、試行錯誤して法則を身につけていくことである。

さて、足のつかい方である。先ずは手と同じように、足、足先という体の末端を腰腹と結んでいなければならない。そして、腰腹で足をつかうのである。腰腹と足先や足底を結んでいなければ、体重をつかうことができないから、大きい力が出ないはずである。

これを技の稽古で身につけていくわけだが、相手がいる相対稽古では難しいだろう。難しいようなら一人稽古で、杖や槍の素振りで身につけていくのがよい。

次に、足の踏み方である。まず、天と地の息に合わせて、息を吐きながら己の体重を足底に落とす。そのためには、体が一本の軸になり、体重が足底の中央である土踏まずの真上に落ちるようにする。

土踏まずが地に近づいたり、接したりすると、踵、小指球、母指球に力が分散されると同時に、指が上に反る。ここで、足底と地とが密着することになる。そこから、さらに母指球に力が集中してくる。

足や手を出す前、つまり横に出す前に、先ずは縦の軸をしっかりしなければならない。そのためには、気持ちを入れるところ、息のつかい方が大事になる。

一軸にならなかったり、息と合わなければ、足と地は密着しないで反発し合ってしまう。これのわかりやすい一人稽古は、四股踏みだろう。また、ふだんから道を歩くときに、意識して歩くとよい。若者や高齢者の歩き方、足のつかい方を観察するのもよいだろう。

母指球に体重がかかったら、体を十字に返せば、その体重の力が手先に伝わるので、大きい力が出ることになる。片手取りの四方投げ等は、それが解りやすいだろう。体を返すとは、腰腹の向きを、十字にある足の向きに合わせて返すことである。

この体を返すことによって、足底にかかる体重が微妙に移動するのである。この体、足が十字に動くことによって、手先に大きい力が伝わるわけであり、もし足底が地に居ついてしまったり、両足が同時に居ついてしまうのでは、力が出ないし、技にはならない。それでは、手をふりまわすしかなくなるのである。

足がうまくつかえるようになれば、手をあまりつかわなくてもよくなる。手は中心線上を十字で上下に動くだけの、最小限の動きになってくる。もし足をうまくつかえなければ、手をふりまわすことになるから、無駄な動きになり、そして、大きい力が出せないことになる。

足を大事にして、足で技をかけるようにしなければならない。