【第47回】 引力の体をつくる

合気道の修行は、引力の養成ともいわれる。結びの稽古である。気結び、体の結びがあるが、今回は体の結びを中心に考えてみたいと思う。

合気道の稽古で技をかけたとき、持たれた手が離れてしまったり、はじいてしまうと、技は上手く決まらない。これは合気道で大切な相手と一つとなる結びが切れて、合気ができず、二人がばらばらに動いてしまうからである。技をかけるには、相手と接点で結び、二人が一人として動かなければならない。相手と結ぶとは、相手と接点でくっ付いていることである。このようにくっついて離れないようにするのが、引力の養成であろう。

引力の出る体をつくる、つまり、引力を出すためには次のようなことが必要であろう。まず、しっかりした合気の体をつくらなければならない。腕が折れ曲がったり、足腰が弱ければ引力の養成などできない。若いうちに合気の体を鍛え上げておかなければならないだろう。次に、体のすべての関節を別々に働くように鍛え、そして柔らかく使えるようにする。そのために関節技などをやって、関節のカスをとらなければならない。特に、肩のカスは取れにくい。肩のカスが取れたら、肩を貫(ぬ)いて、力が体の表からでるようにする。肩が貫けると、自分の腕、小手、手首の重さを感じることができるようになってくる。

引力をつけるためには体だけでは十分ではなく、力の出し方、使い方を注意しなければならない。引力のある力を出すためには、決して力まないことである。力をいれても駄目、力が抜けても駄目な、所謂"天の浮橋"に立つ状態である。そのため、自分の力と自然の力を信頼しなければならない。信頼できないと、力を入れて力んでしまう。また、接点を動かしてはいけない。しかし、接点、支点はかわる。足は居つかず、手と足は連動し、陰陽で動かさなければならない。

力は手の先端からではなく、力が出るもと、手の先端の対極から出さなければならない。つまり、持たれた手を動かすのではなく、その接点は密着させたまま、力が出るもとである菱形筋や腰を使わなければならない。相手とくっ付くのには手がくっ付きやすいが、体のどの部分でもくっつくようにならなければならない。

引力、結びの力ができるかどうかは、どこまで合気の体ができたかと、その体をいかに上手く使うか、ということになる。つまり、それらが出来る程度にしか出ないし、多分、この内の一つが欠けてもできないだろう。相手をくっ付けようと力んでもくっつくものではない。焦らずに、上記に挙げたようなことを一つ一つ身につけることであろう。