【第45回】 合気の腕(骨、筋肉)

合気道を始めたばかりの初心者の腕を掴むと、多くは棒のように硬く、弾力性がなく、少し力を入れてやると折れそうだが、稽古を続けているうちにしっかりした腕になってくる。骨は弾力性が増え、筋肉もでき、腕は丸みをおびてくる。また、初めの頃は腕を掴むと骨と筋肉がくっ付いているので、骨と筋肉と皮が一緒に動いてしまうものだが、稽古を続けていると、諸手取りなどで腕をしっかり握られても骨と筋肉はそれぞれ自由に動くようになるし、筋肉も力を抜けばやわらかくなり、力を入れれば強靭になるという二面性を有するようになるものである。

初心者の腕というのは、"折れ曲がりやすい"。特に肘のところが折れがちである。腕は折らないで日本刀の反りのように曲がるようにしなければならない。腕で折れやすい部分というのは、指、手首、肘、肩である。ここを折れないようにするには、その部位に筋肉をつけることである。そのために、手首は二教、肘は三教や小手返しを沢山やることである。稽古では各部々々を意識して、個別に独立して鍛錬することである。だが技をかける場合は、その各部を統合して使えるようにしなければ、真の力は出てこない。

腕の稽古は、まず、各部を関節ごとにバラバラに鍛え、さらにバラバラに使う稽古をし、それから各部が折れないようにして一緒に使う、という三段稽古が必要であろう。折れない腕をつくるには、諸手取りの呼吸法が最適であろう。諸手取り以外にも片手取り呼吸法や坐技呼吸法もいい。技は呼吸法ができる程度のものしかできない、といわれているほど呼吸法は大切な稽古で、どこの道場でも、どの先生でも、かならずやる稽古法である。諸手取りができたら、次に片方の腕を二人に4本の手で押さえさせて稽古する。この他にも"折れない"しっかりした骨や筋肉をつくる稽古法には、木刀や鍛錬棒を振るのもいい。しかし、いずれにしても合気(道)の骨と筋肉ができなければ本格的な合気道に入れない。まず、骨と筋肉を鍛えよう。