【第447回】 横の呼吸と天地の呼吸の交流

前回(第446回)では、「横の呼吸」について書いた。縦の呼吸だけでなく、横の呼吸もつかえるようになると、遠心力、引力、呼吸力が増大し、それまでとは違う稽古ができるはずである。

これで、腹式による縦の呼吸と、胸式による横の呼吸が、できるようになったことになる。縦横十字の呼吸、すなわちイと縦に吐き、クと横に引き、ムと縦に吐くイクムスビの呼吸で技をかければ、技の効き目はこれまでとは量的、質的に大きく変わるはずだ。

あとは、この縦横十字の呼吸で技を錬磨していけば、呼吸力が身につき、技も精錬されるだろう。

ここまでは、縦の呼吸と横の呼吸を十字に、そしてイクムスビにつかうよう、己の心身と対話をし、試行錯誤しながら稽古したわけである。しかしながら、修業、錬磨にこれでよいということはない。ここから次の次元の稽古に入らなければならないのである。

この段階までは、己自身の中での呼吸づかいということになる。人がいかにがんばっても、それには自ずから限界があるだろうし、また、大したことはできないのである。この次元に留まらず、次の次元へと進まなければならない。

開祖は「日月の気と天の呼吸と地の呼吸、潮の干満とこの四つの宝を理解しなければだめなのです」といわれている。そして、「天の息と地の息と合わして武技を生むのです。地の呼吸は潮の干満で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります。」ともいわれる。

従って、次の修業は、身につけた縦の呼吸と横の呼吸の十字の呼吸を、天の呼吸と地の呼吸に交流させていくことである。縦の腹式呼吸を上下に流れる天の呼吸に合わせ、横の胸式呼吸を地の呼吸、つまり、潮の干満と交流させるのである。横の息は潮が満ちたり引いたり、海の波が打ち寄せたり、引いたりするように、息をつかうのである。

この横の胸式呼吸を、潮の干満の呼吸でするためには、上記にあるように、天地の呼吸の交流にする必要がある。まずは、縦の腹式呼吸による、天地の呼吸との交流が大事である。これを無視したり、軽視すると、潮の干満の呼吸はうまくいかないものである。

天の呼吸、地の呼吸との交流など、人にはできないのではないかと思うかも知れないが、それはできると、開祖は次のように保証して下さっている。「人の息と天地の息は同一である。つまり天の呼吸、地の呼吸を受け止めたのが人なのです」。開祖を信じ、合気道を信じて、精進することであろう。

人は、天の呼吸、地の呼吸を受け止めることができるのだから、それを受け止め、己の縦横の呼吸と交流させていけば、さらなる力が備わり、そして、宇宙が腹中に胎蔵し、合気道の最終目標である宇宙との一体化に到達できるのではないか、と考える。