【第424回】 つま先

前回は「肉体は理によって造りあげるもの」を書いたが、合気道の体は理に合った体遣いをしながら、造りあげていかなければならない。

理合の体づくりをするためには、宇宙の法則を見つけ、そして、それを身につけていくこと、また、見つけた法則で体をつかっていくことだ、と考える。

そして、体の隅々、末端、さらにはミクロの世界まで、余すところなく造りあげていかなければならない。ここでも、これで100%ということはなく、永遠の修行ということになる。

今回の体の個所は、「つま先」である。「つま先」とは爪先であり、足の指の先、足先である。最近、技をかける際に、このつま先の役割の重要性がわかってきた。

特に、片手取りや諸手取り呼吸法、入身投げ、天地投げなどで、最後に相手を倒そうとしても、自分の腕が相手とぶつかってしまい、相手ががんばると倒れないことがある。これは、つま先がうまく働かないことに大きい原因があるといえよう。

つま先の主な働きは、屈曲と伸展である。屈曲はつま先を下に屈めること、伸展は上に反らすことである。つまり、つま先の重点は、この可動範囲と柔軟さと強靭さということになるだろう。

「立位時に足部にかかる圧迫力は、踵部(しょうぶ)が60%、前足部が28%、中足部が8%であるが、足部に体重がかかると、内側縦アーチを介して主として踵部と拇指球に力が分散される」(「筋肉・関節の動きとしくみ事典」成美堂出版)と一般的にいわれているが、これで技をかけたのでは、拇指球で力が反発して、自分の力が相手に伝わらないし、自分を弾き飛ばしてしまうことにもなる。

技がうまく効くためには、踵部から拇指球まであおられた力を、さらにつま先へと流すことである。そのためには、つま先と腰腹を結び、息を爪先を通して地に通すように吐かなければならない。そうすると、つま先と地(畳、床、大地等)が密着し、自分の体重が効率よく地や相手に落ちるのである。さらに密着させるためには、つま先で地をつまむようにつかうのがよい。

次に、つま先を伸展しながら息を入れる(吸う)と、拇指球に力が集まってくる。自分の重力だけでなく、相手の力も吸収するようになる。この感覚は下駄を履いて歩いたり、四股を踏めば分かりやすい。また、それでつま先の屈曲と伸展の鍛錬もできることになる。

昔の人達は下駄や草履を履いていたので、つま先は自然と鍛えられていた。だが、現代では靴が主流になっている。靴の場合は、つま先を下駄や草履のように使う必要がないので、靴で歩いているだけでは、つま先を鍛えることはできなくなっている。これは、つま先で地をつかみ、そして開くを、一歩々々繰り返しながら歩くことで、鍛えることができるのである。

つま先は、技をつかう上でも大事なところである。ただ歩を進めるだけでなく、意識してつま先も鍛えていかなければならないだろう。