【第41回】 手先と腹を結ぶ

合気道の稽古で技をかけるとき、大事なことの一つは、最初に相手と結んだときから、その技を収めるまで、切れたり緩んだりしないことである。切れたり緩んだりすると、せっかくの相手との結びが切れてしまい、崩した相手を再び生かしてしまうことになる。それでは、相手が体制を整え、自由に動くことになってしまうので、自分と相手が二つに別れ、場合によっては争うことにもなる。また、安定した相手なら技を返されて、逆に倒されもするし、危険でもある。基本技で典型的はものに、四方投げがある。相手を倒すためにくるっとまわるとき結びが切れがちで、ここで相手に引っぱられると引き倒されてしまう。

通常は、手を取らせて技を掛けることが多いので、片手取りを例に取ってみよう。始めはしっかりした手を出すものだが、技の途中や最後が緩んでしまいがちである。このゆるむ原因には幾つかあるようだ。

一つは、息の使い方からくる。技をかけて収めるまでに、途中で息を吸ってしまうので、技も切れてしまうのである。息は一技一呼吸で使わなければならない。どの技も一技一呼吸で収めるよう注意して稽古することであるが、特に受け身を呼吸に合わせて取るのがいい。早く動いても、超スローでやっても息切れしないようにならなければならない。

二つ目は、手、腕が充分鍛えられていなくて折れてしまうからである。まずは折れない手、腕をつくらなければならない。諸手取り呼吸法を沢山やることである。合気道は、諸手取り呼吸法が出来る程度にしか出来ないともいわれるので、これを沢山稽古することである。

三つ目は、手先と腹が結ばず、バラバラなことである。手や腕がしっかり張っていても、腹と結んでいなければ駄目なのだ。結ばない最大の原因は、肩に力がこもってしまうからである。手先と腹を結ぶためには肩を貫(ぬ)かなければならない。肩が貫けてはじめて、手先からの力が腹と結ぶことができるわけである。肩の貫き方は、第31回の「肩を貫く」を見てもらいたい。

四つ目は、力みである。合気道は天の浮橋に立ってやれといわれるように、押しも押されもしない力でやらないと、途中でぶつかって切れてしまう。

五つ目は、掴ませた手で合気していないことである。合気をしていないと、相手は生きているので、二つの物体(二人)が各々動くことになり、そうなるとたいがい技は切れてしまう。合気をして二つの物体が一つとなり、自分の身体の一部として動くようにならなければならない。一つになれば投げることも、投げない(受け身を取らせない)ことも自由になり、緩むことも切れることもなくなるし、相手が逃げようとしてもくっついて離れないようになる。

その他いろいろあるだろうが、手先と腹を結ぶためには、これらの原因の一つでも出来ないことがあれば結べないだろうし、技は上手く掛からないはずである。