【第406回】 受けの手
合気道では、自分から攻撃することはない。相手が攻撃してくるのをさばいて、技をかけ、相手を制するのである。まずは受けてから、攻めるわけである。つまり、相手を投げたり抑える前に、相手の攻撃を受けなければならないことになる。
攻撃側(仕手)は、攻撃して、受けを取る。受けは、攻撃を受けてから、攻撃の技をかける。互いが陰(受け)と陽(技をかける)を受けもつのであり、受けと仕手(技をかける側)、さらに受けと仕手の中での陰と陽、陽と陰の組み合わせで鍛錬し合うのがおもしろい。
相手を制し、技をかけるためには、まず受けが大事である。相手の攻撃をしっかり受けなければ、技をかける事は難しい。
相手の攻撃を受けるには、手で受けるのであるから、受けの手は大事である。受けの手がしっかり使えなければ、技をうまく使うことはできないものだ。
受けの手とは、相手の攻撃法(取り)である正面打ち、横面打ち、片手取り、両手取り、諸手取り、後ろ取り各種、武器取り各種等に対するものである。受けの手は、これらの攻撃に対して、うまく使われなければならない。
受けの手には、
- 相手の力に負けない手
- 折れ曲がらない手
- 手首、肘が縦横、上下にそして八の字で柔軟に動ける手
- 相手にくっついてしまう手
- 相手の力を抜いてしまう手
- 腰腹と結んだ手
- 腰からの力が通った手
等が必要である。
さらに、この受けの手をうまく使わなければならないが、それには、
- 手を手刀として使う
- 手を十字、螺旋で使う
- 手は腰腹で使う(手を先に動かし使うのではない)
- 手(手先、腕、上腕)の表(外側)に力を流して使う
- 小指か親指を支点に、手を時計回り・反時計回りに返して使う
等が挙げられよう。
しっかりした受けの手をつくり、その手をうまく使っていくためには、先ずはそれを意識した稽古をしなければならない。仕手(技をかける側)だからといって、投げたり抑えたりすることだけを重視し、受けの手をおろそかにすると、よい技は使えないだろう。
受けの手をつくり、その手を上手に使えるようにするには、相手にしっかり打たせたり、相手が望むようにがっちりと掴ませることである。もちろん、それを制し、技を効かせるのは容易ではないことだろう。
とりわけ、正面打ちでの一教は難しいものだ。しかし、合気道の技の極意は、この受けの手に秘められているように思う。正面打ち一教によって、受けの手を勉強するのがよいのではないかと考える次第である。
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