【第403回】 体に芯をつくる 〜その2〜

今回は、前回の続きとして、芯をつくっていく方法を考えていく事にする。

本来なら折れ曲がる関節部を一本に結び、つなげなければ、芯はつくれない。従って、折れ曲がる関節を一本に働くようにするためには、螺旋でつかわなければならないことになる。

つまり、手はもちろんのこと、足も、体幹も、螺旋でつかわなければならないのである。

力は体の表(身体の背側)を通って、手先に集まるわけだから、体の芯は体の表でつながってできる、と考える。だから、技をかける際には、体の表からの力をつかっていくようにすれば、芯ができていくことになる。

技をかける際には、手首、肘、肩などのところが折れ曲がってしまいがちになる。この最大の原因は、体の末端である手先を先に動かしてしまうことにある。この時には、体の中心をつかうことで、末端の手を動かさなければならないのである。腰腹から動かすことによって、手先に力が流れ、芯ができていく。

また、呼吸も大事である。腰腹からの力を手先や足先まで流す場合は、気(持ち)と息を入れなければならない。特に、吸う息では、芯を感じやすいだろう。

最後に、故有川定輝師範から教わった、体に芯をつくる稽古法を書いておこう。教わったのは、荒川区で行われた「第30回東京都合気道指導者講習会」であり、手刀の講習であった。師範は、手刀の稽古をしっかりしていけば、体に芯ができるといわれた。そして、手刀の使い方や稽古の仕方を教えて頂いた。

芯をつくるのに最適な稽古技(形)は正面打一教である、ということで、正面打一教を何度も繰り返して示され、芯とはどういうものか、どうすればできるのか、を説明して下さった。

相手が打ってくる手をおさえる手は、腰からの力であり、肩甲骨から上げるようにして、すり上げた手刀で相手の手をおさえる。相手の手に接したら、その手刀を縦から横に返し、体が反転する。この時に、手先の指の一本一本にまで芯が通っていなければならない。

この時、反対側の手も、相手の肘を手刀でおさえて進む。さらに、初めの手を再度、手刀のまま縦から横に返し、相手の手首を小指と親指だけでつかみ、槍をつかうように相手を崩す。最後の抑えも、手刀で体全体の力をかけるようにしながらおさえるのである。

手刀の稽古として、正面打一教をやってみると、芯がなければ相手の力に返されたり、力が戻ってきたりして、自分の力が相手に伝わっていかないものである。このことが、他の技ややり方でやるよりも、顕著にわかるのである。これで、手刀の効果的なことが明瞭にわかるから、芯をつくるにはこの稽古がよいようだ。手刀は、正面打ち一教で稽古するとよい。

有川師範の技では、手先だけでなく、体のすべての部分同士をつながり合い、連動してつかわれていた。これこそが、芯ができた体である、と感服した。これまでに見た最高の一教であった。芯の通った手刀でかける一教は、美しいもので、芸術的であり、力強い。これが、武道の極意であろう。微塵もスキがなく、理に合っているから、真理である。真と美があるから、善でもある。合気道が目指す真善美である。つまり、合気道の極致を見せて頂いた訳である。

この師範の姿と動きをイメージして、正面打一教で手刀の使い方を注意しながら、芯ができるように稽古していきたいと考える。